第166夜 過去の代償 ページ19
本拠地への帰り道。迎えに来たソロモンと合流し、夜道を並んで歩く。
そして少しの沈黙を置いて口を開いたのは彼だった。
「なぁ、A。俺は王なんだよな」
「まぁ、そうだね」
「俺は…。優れていると思うか?」
「…」
「…」
「これは僕自身の意見だけど、この世に優れた人なんていないと思うよ? 例えどんなに地位が高くても、一国の王でも、どんなに崇高な人でも、皆一人の人間だよ」
「…」
「…」
「そうか…。お前からその言葉を聞けてよかったよ。ありがとう…A…」
ねぇ、ソロモン。王様になったことを後悔してる? 対等を望んできたのにこんな立場に成り上がったこと、君はどう思ってるのかな…。
もし、不満が溜まって。
誰かを責め立てるなら。
どうか僕を責めてほしい…。
君が王になってしまったのは、あの時あの場所で。違う選択肢を選び取ってしまったから…。
「なぁ…。今まで気になってたんだが」
「ん?」
「お前は良かったのか? 」
「何が?」
そう聞くと、歩みを止め。
正面から僕と向き合う。
「お前からレジスタンスのリーダーの座を奪った事、怒ってないのか?」
ザァァ…と、その言葉に世界が反応するかのように木々が風で揺れ動く。
そしてその風は、昔々の後悔の記憶をも揺れ動かすかのようになかなか止まなかった…。
レジスタンス結成時。
根源メンバーとの意見の結果、リーダーは僕に決定された。
しかし、月日が経ち統制数も増えれば人員も増える。 僕の存在に不満を持つ者が圧倒的に多くなる。
ダビデの息子のソロモンか、忌み子の僕か。
とるべき選択をされたのは僕ではなく、彼であった。
皆の意見に反対する者も出たが。彼の支持力の大きさには勝てなかった。
あの日、僕は。
彼がリーダーになることに対して反対した。根源メンバーの意見を無駄にしないでよ、ソロモンにそんな負担負わせないでって。
でも、聞き届けてはくれなかった…。
その代償が王になった今の彼だ。
風が止み、靡いていた髪が静かになる。
「ふふっ、怒ってないよ!!」
怒るなんて変な話だよソロモン。
そのことに関して僕が怒るなんて絶対にないから!!
「だってソロモンのこと好きだもん」
「はぁ…。その好きが恋愛の意味だったらな。ここだけの話、俺はまだお前が好きだ」
「…!?」
今、時代は800年前を繰り返そうとしている。
その中でこの者たちは。
互いの手をいつまで握っていられるのだろうか…。
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千年彗星(プロフ) - 夢雪さん» 読んでいただきありがとうございます! そして泣いてくださるなんて…! アルマトラン編を好きと言ってもらえて嬉しいです、ありがとうございます! (2018年3月25日 20時) (レス) id: c15a2aa7e8 (このIDを非表示/違反報告)
夢雪 - 悲しすぎるです!(´;ω;`)ウッ…すごく泣きました。無意識に気づいたら泣いてました。アルマトラン編私好きです。 (2018年3月25日 16時) (レス) id: a2e26e90a4 (このIDを非表示/違反報告)
千年彗星(プロフ) - ティナさん» だいぶ落ち着いてきました(*^^*) 声をかけてくださり感謝感謝です!! それに加え何回も見てくださってるとは…!! ゴールデンウィークあたりにはできると思うのでそれまで待っていてくださると嬉しいです(*^^*) (2017年4月28日 12時) (レス) id: 5483d583eb (このIDを非表示/違反報告)
ティナ(プロフ) - お久しぶりです! 落ち着いてきましたか? 何回も繰り返し見てます! 更新楽しみにしてます! (2017年4月27日 21時) (レス) id: c9a6aed029 (このIDを非表示/違反報告)
千年彗星(プロフ) - マロンクリームさん» コメントありがとうございます!! だんだん落ち着いてきたので更新もそろそろできると思います! これからもよろしくお願いします(*^^*) (2017年4月23日 0時) (レス) id: 5483d583eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千年彗星 | 作成日時:2016年6月25日 22時