弱虫と体幹おばけ［角名倫太郎］

弱虫3匹目 ページ5

4月。兵庫県にある稲荷崎高校に、私は県外からの学力特待生として入学した。

1年7組。幸いなのか不幸なのか、倫太郎とはクラスが遠く離れ、男子バレー部もうちのクラスから入部者は出ずに、男子バレー部とは一切関わりを持たずに済んだ。

もちろん私はお母さんに理由としてあげたように、吹奏楽部に入部した。そして入部した後に後悔したのは、バレーボール部が強豪であるがために、わざわざ全国大会の応援に吹奏楽部がついて行くことだった。

私は夏の吹奏楽コンクールの正規出場メンバーとして倍率高めの校内オーディションに合格し、夏の大会へ向けて猛練習をつんでいた。

今までとは違い、楽譜の上の強弱記号や速度記号は周りと合わせてのそれだったことがすごく大変だった。小学校から積み上げてきたソロの腕前は私を裏切らなかったが、今までにない団体での経験は私をすごく苦しめ、また格段に上達へと連れていってくれた。

夏のインターハイにバレーボール部が出場決定したらしい。そう聞いた時、まさか応援演奏に行ったりなどはしないかととても心配した。

そんなことをしたら、半年間メールでも電話でも一言も漏らしたことのなかった、
私も稲荷崎にいるの。の情報が、突如として倫太郎へ行くことになるかもしれなかったのだ。

そんなの、ストーカーと変わらない。

幸いにも私たち吹奏楽部は、コンクールの練習のためにインターハイへの応援に行くことは無かった。バレーボールをしている倫太郎はなによりも好きだが、今の状況でばれては、一生目を合わせてもらうことも出来なくなるだろう。

倫太郎は学校でとても目立つ存在だった。
同じくバレーボール部の宮双子に比べても遜色ないくらい、彼の名前は1学年の中に広まっていて、女の子たちの会話にちょくちょく登場していたし、私も友達に話題を投げかけられたりしたことはあったが、

貴「へえ、そんな人がいるんだね。」

それしか言わなかった。私はほんとに遠くから見て入れればそれで良かった。ただ、1週間に1度存在が確認できるくらいの距離であれば、別に認識されていなくても、目が会わなくても全然平気だった。

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