27.姉と猫 ページ27
伊地知「この辺でいいですかね?」
A『はい。恵とはここで待ち合わせしているので。
伊地知さん、ここまで送ってくれてありがとうございました』
伊地知さんにお礼を伝え車から降りる。
辺りは少しずつ夕闇に包まれており、秋らしい涼しい風が髪をくすぐった。
恵「__任務終わりなのに悪いな、A」
A『恵!ううん、早めに終わったから大丈夫だよ。
あれ、他の皆んなは……?』
待ち合わせ場所にしていたコンビニの裏手から恵が出てくる。
心なしか焦っているようにも見えた。
辺りを見回しても、一緒に来ていたはずの悠仁たちが見当たらない。
恵「あいつらには先に帰ってもらった。任務の危険度が跳ね上がったんだ」
A『そうだったんだ。それなら恵はどうしてここに……』
恵は悠仁、野薔薇、順平の3人の呪術師と、新田 明という補助監督の人と任務に当たっていたはず。
だけど、周りには僕たちしかいない。
理由を聞けば恵は意を決したように口を開き__
恵「今回の件は……俺個人の問題なんだ。だから、出来るだけ早く解決したい。
Aには悪いが付き合ってほしい」
いつものクールな態度とは違う、焦りが滲んだ声音に僕は頷く。
A『もちろん構わないけど。理由を聞いてもいい?』
恵「そう、だな。力を借りるのに話さないのは不公平だよな……。
でもあいつらには言わないでくれ」
あいつらというのは同級生の悠仁たちのことかな。
あまり自分のことを話さない恵だけど今回ばかりは違うみたい。
まぁ、どうして恵がこんなに焦っているのか。僕はもう知っているんだけど。
恵「……伏黒 津美紀。俺の義理の姉だ。
約1年前、正体不明の呪いによって目を覚まさなくなった。
今回の呪いにも……呪われている可能性が高い」
恵はそう話しながら自分の拳を強く握りしめる。
きっと津美紀さんは恵にとって大事な人で、僕を呼んだのも助けたい一心だったんだと思う。
A『……事情は分かったよ。
それなら、出来るだけ早く祓った方がいいね』
恵「ありがとう……A。お前には感謝しきれないな」
A『お礼は全部終わってからね。それじゃあ、さっそく八十八橋に行こうか』
そう言って僕は恵の前を歩き始める。
だけど、この後に起こる展開を思い出しどうしようかと悩んでもいた。
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作者名:シュリィ | 作成日時:2023年5月7日 20時