ネコになるヒト、ヒトになるネコ

ルフィ ページ1

｢A！｣


　定位置であるサニーの上から名前を呼ばれて、なーんと声を出す猫が一匹。風でそよぐ手入れの行き届いた柔らかな毛並みは船員から甘やかされ愛されている証である。

　器用にジャンプをして呼んだ主であるこの船の船長、ルフィのトレードマークの麦わら帽子の上に寝そべるように乗ると、すぐに身体が浮いて膝の上に抱えるように乗せられる。全身をくまなく撫でるように少し雑に触られても惜しみなく喉をごろごろと鳴らしてしまうのは、昔から変わらないその撫で方と伝わる愛情がどうしようもなく好きなのだ。

　一通り撫でて満足したのか今度は両脇から手を通して持ち上げられる。しししし、と楽しそうに笑う顔が目の前にくるから、身体を伸ばして鼻の頭を舐める。続けて鼻の頭同士をくっつけると、丸い目をぱちくりと瞬かせてから砕けた笑みを浮かべた。


｢しし、くすぐってェ！｣

｢なぁーん｣


　やり返すようにルフィに頬ずりをされたAは、喜ぶでも嫌がるでもない、なんとも言えない声で鳴いた。

　しばらくして身体を離したルフィの顔を覗くと、少し不満そうな顔に小さく首を傾げる。


｢まだしゃべんねェの？｣

｢なぁーん｣


　先程と同じように鳴いたAにルフィはさらにムッと口元をゆがめた。それでもAは気にすることもなく、するりと身をよじって手の中から抜け出す。

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