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気付いたら眠っていた夜から
朝になった
ベッドで寝ている私には
きっちり布団がかけられていて
少し離れたソファに
松村はジャケットをかけて寝ていた
そんな姿を見て、
申し訳なさを感じたが、
これが彼なりの優しさなんだって思うと
もっと心が痛くなる
私の視線に気が付いたのか
ゆっくりと目を開き
大きな欠伸をして
「 おはよ 」
昨日は何も無かった
そう言っているかのように
松村は私に笑いかけた
気まずさがあるのなんて嫌
そう思うのは一緒なんだなって思って
私も松村と同じように
『 おはよう 』
そう笑顔で返した
着々と進む仕事に
松村のことを考えている暇なんてなくて
クタクタの状態で 家へ帰った
エレベーターに乗ると
松村とエレベーターの中でのドキドキを思い出して
顔が火照ってしまう
早くお風呂入って寝よう
そう心に決めてエレベーターから出ると
「 最低 ッ ! ありえないんだけど ッ 」
女の怒鳴る声と、
鋭い音が響いた
声のする方を見ると、
樹が 女の人にハンドバッグで殴られていて
その場に立ち尽くして見入ってしまった
少し落ち着いたのか女の人は
私を見つけては、
少しアタフタとして
足速に通り過ぎていった
「 変なとこ見られちった 」
と、無理矢理笑顔を見せる樹
左頬には擦り傷があって
昨日のリナさんを思い出す
私は 樹に近寄って
頬の傷に少し触れると
痛がる顔をして私と目を合わせる
『 お揃いだね 』
と、私の左頬の擦り傷も見せて
笑ってみせる
すると、樹は切なそうに微笑んで
私の腰を引き寄せた
ふわっと香る樹の匂い
なんだか安心感があって
身体を預けてしまう
キツく回される腕に
今は慰めなきゃいけない
そう思って、
樹の背中に手を回した
すると、
急に身体が離れて
樹の部屋へ強引に腕を引かれる
玄関の壁に押し付けられ
腕を制される
樹の目付きが怖くなって
目も、腕も離すことが出来ない
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作者名:shiii | 作者ホームページ:http://shinooooo
作成日時:2019年2月25日 11時