夏の魔法３

７ ページ9

みんなに勧められて飲まされてもうてさ、
神ちゃんは、ほろ酔い。


「智洋、相変わらず酒弱ーんだな。
真っ赤んなってる」


「ほんまですか？」


慌てて、自分のほっぺ、
綺麗な両手で包む仕草。


こんな可愛ええとこ、
松岡さんに見られてもうて。


ああ、もお。


そこにタクシーがやっと一台やって来た。


「あっ、やっと来ましたよ！」


おっきく手を振ってたら、
俺らの前に滑り込んできた。





タクシー乗り込む時、
神ちゃん、ふらついて、
松岡さんに抱き止められててさ。


そんだけでも、
もやもやしてんのに。


タクシーの中でも、
松岡さんに、べたべたされてる。


「耳まで真っ赤っかだな。
うわ。
ピアスの穴、また増えたか？」


耳たぶ、指で挟まれて、ぷにぷにされてんのに、
払い除けへんねん。


彼氏の目の前で何されとるねん。


仕事関係の人やし、
ひとまわりも年上のキャリアある人やし、

俺にはどうすることも出来へん。


社会人の辛いところや。


「ふは。くすぐったいです。
大学ん時に全部開けたんで、
増えてないれす」


神ちゃんも、酔うてるせいか、
ほわほわした喋り方して、
甘えてるように感じる。


窓の外の札幌の街並みを眺めてるフリして。

一刻も早くこの地獄の時間が終わることだけ祈ってた。





俺らが今日泊まる、
ビジネスホテルに到着。

ここで松岡さんとお別れかと思いきや。


松岡さんがタクシーのお会計してくれはったから。


お礼言うてたら、

なんと松岡さんも降りて来はった。


え？なんで？


「部屋まで送るわ」


なんでそこまで過保護やねん。


やっと二人きりや思うてたのに。


俺ん中で限界が近付いてる。


チェックイン済ませて、
３人でエレベーターに乗り込んで。


１３階の隣同士の部屋の前。


「智洋、久々に会えたんだから。
部屋で飲み直さねーか？」


その言葉と、
神ちゃんの髪に触れたことで。


ギリギリで保ってた理性が壊れた。


「仕事はもう終わりですよね」


気付いたら、そう声になってた。


ぽかんとなってる神ちゃんの手首掴む。


「とも。
泊まんの、俺の部屋でええやろ？」

８→←６

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す