【池沢佳主馬】夏の戦争ともうひとつの恋【短編】

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ひと夏去って、秋が来て、冬が終わって、春を越して、

二度目の夏を迎えるときに、そのときは来た。


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佳主馬「行っちゃうんだ」

A「うん」

佳主馬「ふぅん」

A「寂しがらないよーに」

佳主馬「寂しくねーし」

A「かっわいくなー」

佳主馬「うっさいな」

A「…じゃあね。元気でね」

佳主馬「…お前も……か、風邪とか引くな…よ」

A「…。うん。気を付ける」


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Aは去った。


行き先は告げられなかったし、聞かなかった。

また会えるとか戻ってくるとか、言われなかったし聞かなかった。

それが答えだと思った。


ただ少しの間過ごしただけの存在。

それでいいと思った。


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佳主馬「っぅ…う、ぅ…」


泣いた夜もあった。

本当は、それだけ大きな存在だった。

だから決めた。


心の奥に蓋をすること。

思い出も 夏の匂いも あの笑顔も 全部。


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忘れることは怖かった。

だけど覚え続けるのも辛かった。


ゲームの腕だけは磨いたけど、

Aを思い出すつもりなんてなかった。


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なのに


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なんで今更、思い出させるんだ―――…


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