☆龍殺しの少女【オリジナルファンタジー】

十九　暁梨沙子 ページ22

「梨沙子はな、４年前に最愛の彼氏を亡くしたんだ。」

そう一言、アスタは呟くように言った。

「恋愛絡みの話？」

「まあそうとも言える。でも、梨沙子にとっての彼は、唯一の家族のような存在だった。
龍門寺カケル。梨沙子の同期で俺の兄貴でもある。」

アスタの兄…


そうか。やはり、龍による被害は尋常なレベルでなかった。
ここにいる人たちのほとんどが、何かしら大切な人を失っている。

今更ながらに思い知ってしまった。


「それじゃ、アスタのお兄さんも龍狩り？」

「いや、違う。カケルは『山賊』だった。」

「山賊？」

「ああそうだ。吹雪はやっぱり知らないか。山賊って言っちゃあれだな。
端的に言えば、龍狩りの狩った龍を狙う者たちのことだ。」

アスタの言葉に息を吞む。

「はは、これだけ言やあ只の悪役だな。
実際他人の利益を奪う輩の意だし、仕方ないか。でもと言えばなんだが
山賊の側にいる者たちのほとんどは、龍狩りに見捨てられた奴らの集まりなんだ。」

「まさか…」

「ああ。兄さんは幼い頃、命の危機って時
信頼していた仲間の龍狩りに置いて行かれたんだよ。」

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