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 悔しいのやら恥ずかしいのやら、それらを吹っ切りたくてスピードを上げようとぐっと拳を握る。辺りから浮かび上がった水滴が足元に水溜りを作り地面を蹴るように水飛沫を上げた。




「……A?」




 突然後ろから届いた低い声が、鼓膜をやさしく震わせる。握った手のひらから力を抜くと、水もまた同じようにぴしゃ、と力なく地面に跳ねた。




客卿(かっけい)殿」




  結った長く細い髪を揺らして歩いてきたのは、かの有名な葬儀屋「往生堂(おうじょうどう)」に招かれた客卿の鍾離殿だった。博識で専門家も舌を巻くほどに造詣(ぞうけい)の深い彼には何度かお世話になっており、彼は公子様とも面識があってなにかと顔を合わせることが多い。
 もちろん私が愚人衆(ファデュイ)に属していることも知っているから、肩の力を抜いて話せる人物でもある。実際、港では鍾離「先生」と呼ばれ親しまれているし。
 まあとにかく、客卿殿は信頼できる御人(ひとがら)なのだ。その代わりか一癖も二癖もあるが。




「どうされたんですか、こんなところで」

「それは此方(こちら)の台詞でもあるな。…今日は迎仙儀式だろう」

「…そうでしたね」




 そろりと視線を泳がせる。正直すっかり忘れていた…七星迎仙儀式───年に一度、商売繁盛を願い、璃月を治める岩神モラクスから今後の璃月の経営方針についての神託を授かる儀式。
 璃月七星と呼ばれる璃月港の経済管理を担う7人の権力者たちが取り仕切る式典で、商人だけでなく冒険者や観光客などはこぞって一目見ようと訪れるほど有名だ。

 璃月港へ発った旅人もそれが目的なのかもしれない。…だとしたら私がモンドに言った意味とは?あんなに恥ずかしい思いをした意味とは、?

 いやいや。今はこんなの考えてる場合じゃない。「愚人衆(ファデュイ)の仕事か?」客卿殿の質問にはっと意識を戻し、「あながち間違ってはないですね」と相槌を打つ。「こんな時まで忙しそうだな」と客卿(かっけい)殿は笑った。

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もゆ(プロフ) - 2024になった今でも、ずっと楽しみにしています。 (1月6日 2時) (レス) id: 72eec337ed (このIDを非表示/違反報告)
gtuysut5843…(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (2022年8月30日 0時) (レス) @page45 id: 5bb1efd8a4 (このIDを非表示/違反報告)
なつおと(プロフ) - 夢さん» コメントありがとうございます。そういって頂けるととても励みになります!一定間隔空けての更新となりますが、素敵な内容をお届けできるよう頑張りますね。 (2022年4月5日 21時) (レス) id: 10e597e23d (このIDを非表示/違反報告)
- 小説めちゃくちゃ面白くて大好きです!続きがとても気になります!更新頑張ってください! (2022年4月4日 18時) (レス) id: 5b6bab53ae (このIDを非表示/違反報告)
なつおと(プロフ) - ルリさん» コメントありがとうございます。感嘆符の数だけ気持ちが伝わってきていて私も嬉しいです。これからも更新頑張らせて頂きますね! (2022年2月20日 21時) (レス) id: d342b4dd7b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:  | 作成日時:2021年1月25日 21時

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