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 私は(アイツ)とは違って水元素のみ(・・)での転移魔法とか使えないから、移動の大きい任務だったりすると達成に大幅な時間がかかってしまう。場合によっては執行官(ファトゥス)の“博士(イル・ドットーレ)”様より装置を借りたりすることもあるが、彼も忙しいのだから装置を使い回されても困るだろうし…

 コントロールが得意と先程は抜かしてみたものだけれど、実際私の体は邪眼の強力なパワーに追いつけていないのだ。これ以上技術を磨くならば、時間をかけ経験を積むか体をごっそり改良するしか方法はない。
 (すなわ)ち、今ある手は“徒歩”だけ。

 はあ、と溜息に怒り(主に上司への)を乗せて吐き出した。不意に周囲を眺めるといつのまにかアーチ状に(そび)え立つ岩はとうに越えており、もう私は璃月の地へ踏み込んでいたのだと理解する。
 そういえばあの旅館を見ていないなと辺りを見回してみると“望舒旅館”さえも後ろにあって、考え事をしながらどれだけ歩を進めたのか純粋に我ながらすごいなと感じた。


 ……ああ、確か水元素で足元を滑らせるように移動すればもっと速く進めるのか試してたんだっけ。少量の元素を発動していても気付かなくなっていた自身に小さく恐怖も覚える。それだけ邪眼が染み付いてるってことは、一層使役できるようになっているので嬉しさ半面、その分寿命が縮むのを考えると恐ろしさ半面。

 愚人衆(ファデュイ)は血も涙もないと思われがちだけど、実は他の人よりも多く感情を(さら)け出している。だからこそ女皇陛下に捧げた命でも惜しいとは思うし、怖いことだっていっぱいある。それでも私が従うのは“私”ではなく“氷神”だ。


 そこら中にに生えた銀杏並木が、もうすぐ璃月港だと私に告げる。年中橙色や黄色に染まっている葉はいつ見ても飽きず美しく、帰離原と呼ばれる地域の遺跡と合わせて見れば神秘的でとても綺麗だ。
進むスピードを緩めて景色を楽しむことにした私は、ふと暖色にぽつんと混じる淡い萌黄色を見つけた。

 風のように掴みどころのなかったあの風神───そういえばこの色は彼っぽい、なんて。
 …そう思い浮かべるだけで途端に思い出したのは、なるべく考えないようにしていた耳の湿っぽい感触。ぼ、と一気にのぼせた顔を隠すように手で覆う。そんな私を揶揄(からか)うように、生ぬるい微風(そよかぜ)がころころと吹いた。

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もゆ(プロフ) - 2024になった今でも、ずっと楽しみにしています。 (1月6日 2時) (レス) id: 72eec337ed (このIDを非表示/違反報告)
gtuysut5843…(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (2022年8月30日 0時) (レス) @page45 id: 5bb1efd8a4 (このIDを非表示/違反報告)
なつおと(プロフ) - 夢さん» コメントありがとうございます。そういって頂けるととても励みになります!一定間隔空けての更新となりますが、素敵な内容をお届けできるよう頑張りますね。 (2022年4月5日 21時) (レス) id: 10e597e23d (このIDを非表示/違反報告)
- 小説めちゃくちゃ面白くて大好きです!続きがとても気になります!更新頑張ってください! (2022年4月4日 18時) (レス) id: 5b6bab53ae (このIDを非表示/違反報告)
なつおと(プロフ) - ルリさん» コメントありがとうございます。感嘆符の数だけ気持ちが伝わってきていて私も嬉しいです。これからも更新頑張らせて頂きますね! (2022年2月20日 21時) (レス) id: d342b4dd7b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:  | 作成日時:2021年1月25日 21時

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