薄 明 時 雨【 原神 】

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　陛下はあまり自身の考えを表に出さない方なので、これは憶測だが…邪眼は“自身の生命力を糧にする”という欠点の通りに、未だ完全な力を発揮できてはいない。それをもっと引き出すために神の心の研究を進めようとしている、可能性が高い。

　そして、神の心を持つのはこの幻想(テイワット)大陸の七国を象徴す(おさめ)る“七天神”のみ。執行官(ファトゥス)が集めることができている神の心は一つ、風神の神の心。
　詩人は先程「今は(・・)神の心がないとはいえ」と発言している。詩人──いや、“風神バルバトス”は神の心を奪われた、七神のひとりだ。
　それについて隠す気がないのも気掛かりだな。まるでこちらが始めから弄ばれていた様な、…実際そんな感じか。

　驚愕を隠せない私に、風神はぷるぷると肩を震わせる。もう耐えきれないとでも言うように吹き出した風神の笑顔は、なんだか愚人衆(ファデュイ)相手のくせに気が抜けていたような気がした。




「水元素はこれからも使うの？」

「これが使えなければ、自分はただの役立たずなので」




　否定はしないらしい。風神で確定だなと脳を回し情報だけを取り入れたあと、つんと視線を横に泳がせる。ふうん、と自分から聞いたくせに興味のなさそうな返事を返す風神に、どこかの上司のお陰で覚えた怒りが再びゆらり燃えた。
　その様子を見ていた風神はまたふっと吹き出す。怪訝な目つきで見つめても風神はくつくつと喉を鳴らすばかりだった。




「…っはは！…自分を役立たずだなんて思い始めれば人生はすぐに終わっちゃうよ」

「人間の生なんて、あっという間なんだから」




　含みのありそうな笑いを浮かべ人差し指をちょんと唇に当てる風神に、その言葉の意図を今までの発言から探る。必死に頭を回すが、なんせキーワードが行動にしかなく言葉は残っていないのだ、中々(なかなか)正解には辿り着けない。そうして数十秒が経っていた。

　腰と肩甲骨あたりを支えられ、半(なか)ば“お姫様抱っこ”とやらのようになりかけていた姿勢から一気に起き上がる。そうすると風神はなぜか名残惜しさを感じさせる表情(かお)で、支えていた手をゆっくりと離した。

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