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 それぞれの料理をテーブルに置き、手を合わせて仙人の応えを待つ。すると何かに反応するように旅人がふっと顔を上げ、その目はそばにあった大きな木のカエデの葉の、ずっと先を見つめていた。
 見れば、さっきまではなかった洞窟の入り口が開かれていて。料理を置いたら絡繰(カラクリ)が覗くって、一体どんな仙人なのか見当がつかない。

 洞窟の入り口へ向かうと、その先に秘境の門がずしりと重く佇んでいた。旅人がそろりと門へ手を伸ばせば、門の紋様は青い光を放ち、ギィと古く傷んだ音と共に門がゆっくりと開いていく。
 そして、突然。「ああ…“禁忌滅却の札”の匂いがする」───そんな声が、門から広がった不思議な空間から、どこからともなく聞こえて響いた。仙人の声だろうか。




「君達、何しにここへ来たかは知らないが、その敬虔(けいけん)な心に免じて機会を与えよう!妾に会いたくば、妾が仕掛けた洞窟を通ってくるがよい」




 そう言って、仙人らしき人物の声はするりと言葉の跡から消えた。「待って!」と旅人が空虚に叫んでも、人物は応じてはくれない。「行くしかないのか…」途方もなく広がる秘境の世界に、パイモンが静かに溜息をついた。「みたいだね」と旅人は三つ編みを揺らしながら秘境へ足を踏み入れる。

 「でも、これ以上に広い世界(テイワット)からたった一人を見つけ出すよりは…簡単なんじゃないかな」
 不意に彼の口から紡ぎ出されたそれが、妙に頭に引っかかった。ただ単に意味深だったと感じただけだけれど、彼にとってそれはとても大切なワードだったんじゃないかと、なんだかそう思ってしまったのだ。

 思考と同時に身体ごと止まってしまって、踏み出そうとした足が行き場を失う。

 ───その瞬間。溜まっていた疲労が押し寄せてきて、視界が一気にぼやけた。歩きにくい、ガタガタとした地面に運悪く足が引っ掛かりを見つけて(つまず)く。道のない方向へと、身体が宙に投げ出されようとしていた。

 マズい、非常にマズい。空宙で身体を捻れるほど鍛えてないし、落ちたら真っ逆さまで空間の果てで一生彷徨うことになる。つまり、死ぬ。


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もゆ(プロフ) - 2024になった今でも、ずっと楽しみにしています。 (1月6日 2時) (レス) id: 72eec337ed (このIDを非表示/違反報告)
gtuysut5843…(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (2022年8月30日 0時) (レス) @page45 id: 5bb1efd8a4 (このIDを非表示/違反報告)
なつおと(プロフ) - 夢さん» コメントありがとうございます。そういって頂けるととても励みになります!一定間隔空けての更新となりますが、素敵な内容をお届けできるよう頑張りますね。 (2022年4月5日 21時) (レス) id: 10e597e23d (このIDを非表示/違反報告)
- 小説めちゃくちゃ面白くて大好きです!続きがとても気になります!更新頑張ってください! (2022年4月4日 18時) (レス) id: 5b6bab53ae (このIDを非表示/違反報告)
なつおと(プロフ) - ルリさん» コメントありがとうございます。感嘆符の数だけ気持ちが伝わってきていて私も嬉しいです。これからも更新頑張らせて頂きますね! (2022年2月20日 21時) (レス) id: d342b4dd7b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:  | 作成日時:2021年1月25日 21時

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