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 いま、なんて?

 ぞくりと背筋に寒気が走る。「なんで、」口から言葉がこぼれ落ちて風にかき消されていった。だって私はひとつも組織について明かしていない。なのに、なのにコイツは。
 ダメだ、今頭を持っていかれるな。「自分の素性を知らない者に愚人衆(ファデュイ)とバレても多少の問題はない」心の中でそう言い聞かせ、唾を飲み込んで頭を落ち着かせる。もしあちらがこちらの情報をモンド中へ晒すようなマネをされたのならば、邪眼(アレ)を使ってでも口止め(・・・)するまで。

 まあどんな行動を取るにもまずは知ることからだ。外交の者ですと伝え、風による拘束を解いてもらう。




「ふうん、外交ねえ…酒の貿易かい?」

「我が国家は秘密主義ですので詳細はお答えできかねます」




 短剣から手を下ろして敵意がないことを証明する。しかし詩人はそれを確認することもなくへらりと笑ってみせた。「ボクはねえ、リンゴ酒が好きなんだ」…は?




「いつものお酒に加わる少しのフルーティーな香り…すっきりした甘みが口の中で広がってぇ〜…!」




 恍惚とした表情でここにはない彼の頭の中の、おそらくリンゴ酒を思い浮かべて語る詩人。
 私は意味がわからない、と言うように眉を(ひそ)め、かといって自分から口を挟み水を差すこともせず、ペラペラとよく回る口から出る言葉を右から左へ聞き流していた。



* * *


 …一通り言い終わったのか、詩人はだらしなく(よだれ)を垂らし余韻に浸る。結局何だったんだコイツと思いながら、「ここはどこだ」やら「旅人(ターゲット)はどこにいる」やら「コイツは何者」やら、と髪を適当にいじるフリをしつつ少なすぎる情報を整理していると「ねえねえ!」と急に声をかけられた。





「使節の人ってその土地や特産品なんかをよく知ってる人が選ばれるでしょ?君は(モンド)についてどれくらい知ってるの?ほら、好きなお酒とか〜…」





 それはなんでもないような、友人に話しかけるようなラクな声色だった。それでもその声に、私は反応をしないよう必死に体を押さえ付けていた。

 詰み。

 確かに外交官とか使節団、貿易での最高責任者は、実力がありつつ知識が豊富な人物が選ばれる…が。その点、私はモンドについて何も知らないのだ。人並みに“モンド城は酒と牧歌が有名”くらいはわかってるんだけど。

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もゆ(プロフ) - 2024になった今でも、ずっと楽しみにしています。 (1月6日 2時) (レス) id: 72eec337ed (このIDを非表示/違反報告)
gtuysut5843…(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (2022年8月30日 0時) (レス) @page45 id: 5bb1efd8a4 (このIDを非表示/違反報告)
なつおと(プロフ) - 夢さん» コメントありがとうございます。そういって頂けるととても励みになります!一定間隔空けての更新となりますが、素敵な内容をお届けできるよう頑張りますね。 (2022年4月5日 21時) (レス) id: 10e597e23d (このIDを非表示/違反報告)
- 小説めちゃくちゃ面白くて大好きです!続きがとても気になります!更新頑張ってください! (2022年4月4日 18時) (レス) id: 5b6bab53ae (このIDを非表示/違反報告)
なつおと(プロフ) - ルリさん» コメントありがとうございます。感嘆符の数だけ気持ちが伝わってきていて私も嬉しいです。これからも更新頑張らせて頂きますね! (2022年2月20日 21時) (レス) id: d342b4dd7b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:  | 作成日時:2021年1月25日 21時

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