薄 明 時 雨【 原神 】

０４.ミニマム・サクセス ページ20

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　ぽかん、と静かな間(ま)が三つ。「この人(・・・)は連れて行けない」はっきりと形を残して言ったその言葉を撤回するつもりはないらしく、旅人の目は未だ揺れずにいた。


　まず感じたのは、「そういえば名前教えてなかったなぁ」なんていうのんびりした考えと、驚き、それから焦り。


　私が任務を遂行できなくても仕事を振った公子様本人がいるのだから、そこについては心配無用だが…一時的に公子様と交代したとしても元は私の任務、二人のハナシが終わったらまた私に返ってくるだろう。
　しかし───ただの“案内してくれた親切な人”だから関係ない、ここまで連れてきたのもなんとなくだからここで終わる…など。ほかに理由としてはたくさん出てくるが、もしこの発言の理由が“私への疑い”だったとしたら？
　任務を滞りなく続けることなどできなくなって結果は失敗に終わってしまい、私は見事に御役御免。それか自分の想像以上にこの仕事が重要で、上からのかなりデカめの怒りを買ってしまった場合は首と胴体がオサラバ…これが考え得る最悪のパターンだ。

　さすがに私もこれだけは避けたい。でもかといって、繕ってまで理由を聞き出す質問を切り出せないまま、私は彼らの行動を待っていた。




「えっ！？でも空、こいつだって疑われてるかもしれないんだぞ…！」

「わかってる。場の流れでここまで連れて来ちゃったのも俺の責任だから、必ずこの人の疑いは晴らすよ。でも、この人を危険な目には遭わせたくない」




　つまり公子様を信用(・・)したとしても信頼(・・)はしていない、と。それで私をここまで連れてきて必要のない疑いまでかけられてしまったことに責任感を抱き、真意が読めず、私が怯えに怯えて頭を下げていた“公子様自身”か“彼が発端の何か”かがなんらかの害を与えるのではと想定し──それはダメだ。ただでさえ俺のせいで疑われてしまっているのに──…心情的にはこんな感じか。
　結局すべては善意からの行動だったというわけで。焦っただけ無駄だった、人の言葉は善意にとったほうが五倍も賢いと、誰かが言ったその格言の通りだ。

　ここで否定するのもなんだかな、と思い私は「わかりました」と演技を被せて言う。
　それでも、自分に有利な立場というものは任務遂行の上で欠かせないこと。「ただ、」と先の旅人のように私からも言葉を付け加えた。

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