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 慎重に慎重に足を運び、ついにあと一歩でここから出られる──そう感じて私も旅人も気を抜いてしまったらしい。玉京台へのぼる階段前の岩陰から少しずつ足を踏み出していたときだった、旅人のブーツが運良く石階段のレンガに引っ掛かり、小さな音がやけに大きく頭の中で響く。
 見張り兵がその音を聞き逃すなどとといった奇跡もなく、私の目と千岩軍の目がばちりとかち合った。


 互いに沈黙、2秒。


 旅人が私の腰と膝裏に腕を入れた。唐突に体を(おそ)ったつい1時間ほど前も覚えたあの浮遊感から、横向きに抱えられていることをなんとなく察する。
 「ごめん、ちょっと我慢して」旅人としてはこの体制のほうが良いようだ。そのまま目にも止まらぬ速さで階段を降り、もう一段降りようと足をかけたものの…




「逃がすか!」




 武装した兵が私たちを取り囲む。じりじりと追い詰められ、私を降ろした旅人は仕方なく…と言ったようにどこからか片手用の剣を取り出し、若干私とパイモンよりも前へ出て構えの姿勢を取った。
 槍を持った千岩軍が一斉に突撃。咄嗟(とっさ)に身を守ろうと水元素シールドを張るも、それは無事杞憂(きゆう)として終わることになる。




「少年にお嬢ちゃん(・・・・・)、動かないで」




 シールドと同じようになめらかで鋭い、…そんな水元素でできた矢が、正確に兵士の武器を持つ手元だけを狙ってとんでもない速さで降ってきた。その、弓を引いたのであろう人物とともに。
 その人物は水元素を短剣や長槍の形に変形させ、巧みな技使いで次々と兵を薙ぎ倒していく。ばしゅ、と一際大きな音が鳴ったかと思えば、あっという間にそこにいた千岩軍は全員が仲良く横たわっていた。




「ついてきて」




 聴きなれた声と熟練の身のこなし、高い背丈と赤い仮面。あああなたはいつもタイミングが悪いですねと心の中で愚痴をこぼす。
 片手剣をどこかへしまった旅人は、(カラ)になった片手から力を抜いて、“彼”の目を確認するように見たあと、“彼”の後ろを追いかけた。

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もゆ(プロフ) - 2024になった今でも、ずっと楽しみにしています。 (1月6日 2時) (レス) id: 72eec337ed (このIDを非表示/違反報告)
gtuysut5843…(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (2022年8月30日 0時) (レス) @page45 id: 5bb1efd8a4 (このIDを非表示/違反報告)
なつおと(プロフ) - 夢さん» コメントありがとうございます。そういって頂けるととても励みになります!一定間隔空けての更新となりますが、素敵な内容をお届けできるよう頑張りますね。 (2022年4月5日 21時) (レス) id: 10e597e23d (このIDを非表示/違反報告)
- 小説めちゃくちゃ面白くて大好きです!続きがとても気になります!更新頑張ってください! (2022年4月4日 18時) (レス) id: 5b6bab53ae (このIDを非表示/違反報告)
なつおと(プロフ) - ルリさん» コメントありがとうございます。感嘆符の数だけ気持ちが伝わってきていて私も嬉しいです。これからも更新頑張らせて頂きますね! (2022年2月20日 21時) (レス) id: d342b4dd7b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:  | 作成日時:2021年1月25日 21時

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