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02.春風 ページ2




 瞑っていた目をゆっくりと開く。まったく、空間転移まで水元素でやってのけるとは…本当にすごい技術だ、これで戦闘狂でもなければあの人はただのイケメン上司だったんだろうけど。
 跪いた姿勢のままだった体を起こして立ち上がる。とりあえずここはどこか確認しようと辺りを見渡していると、ふと耳に入ったのはうつくしい歌声だった。




「─── De temporibus antiquis loquor Historia de temporibus quando di adhuc in terra ambulant …」




 ぽろん、と竪琴(ライアー)の音と共に流れ込んできた音色は、聞いたことがないはずなのにも関わらず懐かしく感じるものだった。それはこの詩人の腕が良いのか──…はたまた。

 息すら忘れて聞き入ってしまった演奏からはっと意識を取り戻す。ふ、と喉から息を振り絞って吐いた。まばたきをひとつ、それからもう一度歌声の主のほうへ目をやる。
 ───と。先程まであった緑に染まっていた姿はそこには無く(・・・・・・)、まさかと思い勢いよく背後を振り向こうとするも肩に置かれた手にそれは止められた。




「誰」

「誰、なんてひどいなぁ」




 「ボクの詩に惚れ込んでいたのは君じゃないか」惚れ込んでいただなんて大袈裟な。愉快そうに細められた目を、ついさっき公子様にしたように睨みつける。警戒しつつ短剣に手を掛けるも、その詩人は右手でそれを制した。
 それと共に、体が縮こまるような感覚が指先にまで伝わる。両側から凝縮されているような…おそらく風圧だろう、この詩人は私に向けて全方向から風の圧をかけ、動けないようにしているのだ。
 これほど大きく元素を動かせるということは、相当な手練れの(はず)。少なくともただの歌い手ではなさそうだ。

 いつものクセでそんな、呑気な解析を繰り返していた。確定した答えが出せない解析などしている場合ではなかったというのに。





「───こんなところで何をしていたんだい、愚人衆(ファデュイ)のお嬢さん」





.

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もゆ(プロフ) - 2024になった今でも、ずっと楽しみにしています。 (1月6日 2時) (レス) id: 72eec337ed (このIDを非表示/違反報告)
gtuysut5843…(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (2022年8月30日 0時) (レス) @page45 id: 5bb1efd8a4 (このIDを非表示/違反報告)
なつおと(プロフ) - 夢さん» コメントありがとうございます。そういって頂けるととても励みになります!一定間隔空けての更新となりますが、素敵な内容をお届けできるよう頑張りますね。 (2022年4月5日 21時) (レス) id: 10e597e23d (このIDを非表示/違反報告)
- 小説めちゃくちゃ面白くて大好きです!続きがとても気になります!更新頑張ってください! (2022年4月4日 18時) (レス) id: 5b6bab53ae (このIDを非表示/違反報告)
なつおと(プロフ) - ルリさん» コメントありがとうございます。感嘆符の数だけ気持ちが伝わってきていて私も嬉しいです。これからも更新頑張らせて頂きますね! (2022年2月20日 21時) (レス) id: d342b4dd7b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:  | 作成日時:2021年1月25日 21時

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