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空になったマグカップをシンクへ運ぶ。洗うのは明朝でいいだろう。キッチンのカウンター越しに目が合った彼が
「確かに色々あった。引っ越しとか」
と言って笑った。彼の場合、プライベートでも職場でもほぼ同時期に引っ越しをしてしまった訳で、夏場の忙しさといったらそれは大変なものだっただろう。大きな執筆仕事が一つ片付いたので、或る程度肩の荷は下りたようだったけれども、だからと言って他の仕事が無くなる訳ではない。
身近で見ている私でも把握しきれない仕事量なのに、実際に活動している彼はよくもまあ体力がもつものだ。社内でも体力おばけだなんて揶揄されているようだけど、その体力だけは少し見習いたいものだと思いながら、彼の後を追って寝室へ向かうのだった。
＊ ＊ ＊
年越し蕎麦を食べ終えて洗い物も済ませ、紅白も終わり、私と彼は横並びでソファに腰掛けながら各チャンネルの年越し番組をザッピングする。特にどのチャンネルを見るとも決まっていないので、良さそうな番組を見つけると一旦そこでチャンネルを止めてみたりして、まあ適当なものだ。そうこうしている内にテレビの中でカウントダウンが始まり、あっという間にその数字はゼロとなった。
彼と一緒に過ごす年越しは今年で二度目となる。交際して初めの年は私は帰省して、去年は彼の前の部屋で、そして今年は新しくなった私たち二人の部屋で。年を重ねるごとに私たちを取り巻く環境も変化していっている。果たして一年後はどうなっているだろうか。
新たな年を迎えた挨拶を互いに済ませ、早々に
「という訳で伊沢さん、今年の抱負は如何ですか？」
とインタビュアーの真似事をしたのは私の方だった。去年も同じようなネタ振りをした記憶がある。まあ一年の計は元旦にありと言うし、最初にざっくり目標を立てて見据えるのは悪い話ではないだろう。
「そうですね〜。抱負って訳じゃないんですけど、車を買おうかなとは思ってますよ」
彼は私の問い掛けに呼応してか、わざと仕事モードのような受け答えをしてくる。その回答の内容が想像していたものではなかったので、少し驚いた。
「あ、そうなんだ？ 買うの？」
「そろそろね」
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奈都(プロフ) - のんさん» コメントありがとうございます。それぞれの気持ちに寄り添って書いてきたつもりではあるので、感情移入して頂けているととても嬉しいです。やっぱり最終的にはきっちりゴールインしてほしい…！と思いつつ亀の歩みですが、これからも見守って頂けると幸いです。 (2021年10月1日 22時) (
レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - 更新に歓喜です‼︎Gravityから読ませていただいている側としては感情移入しすぎて、若干泣きそうになりましたが、結婚考えてくれてたんだとホッとしました(笑)何度読み返してもキュンとできる奈都さんの小説、、私の元気のもとです！ (2021年9月26日 2時) (レス) @page31 id: 1f7bb03b81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：奈都
| 作成日時：2021年1月31日 13時
