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「Aさん、なんか希望無い？」
だけど今回は本当に考えている、という事を示す為に、彼女にも新居の希望を確認してみる。するとぱちくりと何度か瞬いた後、彼女は怪訝な顔をして俺を見つめてきた。何を考えているのか本当に分かり易くて助かる。
「どうして私に訊くの、って思ってる顔だ」
「そうですね」
「俺、年明けにも同じような事言わなかったっけ」
「そういえば言ってたような気がしなくもないね。なんかこう、あまりはっきりとしない言い方だったけど」
「手厳しいな〜」
誤魔化すように笑うが、実際、年始の時の俺の発言が相当ヘタレだった事は認めざるを得ない。言わなくても大抵悟ってくれる彼女だけれど、ちゃんと言葉にしなければいけない事もあるだろう。だから、今日は。
「あのさ、マジで一緒に住まない？」
箸を置きながら自然に、なんて事無い風を装いながら提案をしてみる。今の発言の際に、俺の声は緊張に震えていなかっただろうか。
恐る恐る彼女の様子を伺うと、酷く驚いた顔をされてしまった。
「えっ！ 結婚する気も無いのに！？」
「えっ！ Aさん俺と結婚する気ねぇの！？」
思わず反射的に返してしまう。ちょっと待ってくれ、今、色々な将来の計画が音を立てて崩れていくのが聞こえたぞ。この先の未来でポイッと彼女に捨てられたとしたら、流石に乗り切れる気が全くしない。
「いやいや、だって拓司くんがいつも言ってるじゃない。結婚は考えてない、無理だ、したくない、って」
「え……」
その瞬間、彼女の見せるあからさまな困惑の表情の中に、不安の色が混じっている事に気付いた。ああそうか、俺はこれまで対外的な言葉で、自分の仕事における面倒を省く過程で、いつの間にか彼女に暗い影を落としてしまっていたのか。
「いやそれは、なんつーか、その……そういう意味じゃないって言うか……」
この期に及んでも歯切れの悪い言い方しか出来ない自分が情けない。講演なんかではあんなにベラベラと雄弁に語れるのに、どうして大事な時に上手い言葉が出てこないんだろうか。
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奈都(プロフ) - のんさん» コメントありがとうございます。それぞれの気持ちに寄り添って書いてきたつもりではあるので、感情移入して頂けているととても嬉しいです。やっぱり最終的にはきっちりゴールインしてほしい…！と思いつつ亀の歩みですが、これからも見守って頂けると幸いです。 (2021年10月1日 22時) (
レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - 更新に歓喜です‼︎Gravityから読ませていただいている側としては感情移入しすぎて、若干泣きそうになりましたが、結婚考えてくれてたんだとホッとしました(笑)何度読み返してもキュンとできる奈都さんの小説、、私の元気のもとです！ (2021年9月26日 2時) (レス) @page31 id: 1f7bb03b81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：奈都
| 作成日時：2021年1月31日 13時
