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俺の声に、彼女がソファに寝転がる。うつ伏せになった彼女のルームウェアから覗く白い脚に手を置き、ぐっと力を入れて押すと、一瞬だけ身構えたように彼女の身体が硬くなった。けれどすぐに弛緩していくので、特に問題は無さそうだ。
「痛くない?」
「大丈夫。もっと強くてもいいかも」
クリームで滑りの良くなった肌を、ぎゅっと押していく。脚の先から身体の中央へとマッサージしている内に、何となくクリームが彼女の肌に浸透していくような気がして、これもなかなか悪くないものだ、なんて思ってしまった。
「なんかいいなぁ、これ」
「いいって何が?」
「俺がAさんの肌の滑らかさを保ってるって思うとちょっと興奮する」
しみじみと言うと、寝転んだ状態のままで彼女がこちらを振り返った。
「……ごめん、今の拓司くん、かなり気持ち悪い」
今までに見た事の無いようなドン引きした顔をしている。これは本気で気持ち悪がっているようだ。失敗した。別に他意は無く、本心からそう思っただけなのだが、そんな弁明をすると「本心なら尚気持ち悪い」なんて言われそうだ。大人しく手を動かす事にしよう。
「でも拓司くん、手が大きいからがっつりカバーしてくれる感じがするね」
「Aさんは手、小せぇもんな」
「そうだね。その小さい手で良ければ、後でお礼に肩でも揉みますよ」
ふふっと笑う彼女からは、数秒前のドン引きした様子はもう見えない。そっと安堵の息をついて、新たなクリームを掬い取った。彼女の日常に少しずつ入り込んで俺が侵食していくという事に愉悦を感じるなんて、流石に最上級に気持ち悪い自覚があって言えなかった。
* * *
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奈都(プロフ) - のんさん» コメントありがとうございます。それぞれの気持ちに寄り添って書いてきたつもりではあるので、感情移入して頂けているととても嬉しいです。やっぱり最終的にはきっちりゴールインしてほしい…!と思いつつ亀の歩みですが、これからも見守って頂けると幸いです。 (2021年10月1日 22時) (レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - 更新に歓喜です‼︎Gravityから読ませていただいている側としては感情移入しすぎて、若干泣きそうになりましたが、結婚考えてくれてたんだとホッとしました(笑)何度読み返してもキュンとできる奈都さんの小説、、私の元気のもとです! (2021年9月26日 2時) (レス) @page31 id: 1f7bb03b81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:奈都 | 作成日時:2021年1月31日 13時