【d!】実況者「なつ」くん【kn】【男主】

隣人とあの人 ページ9

.

　事故から1カ月と10日。全治2ヶ月を無視した驚異の回復力と早く退院したいという我儘を押し通した退院からの3日目。
　今はまさに引っ越しの為、引っ越し業者が荷物を運び出している真っ最中だった。
　朝から行っているし量もそれほど多くないので、何事も起こらなければ昼過ぎには引っ越し先に荷物を全て運べるらしい。
　未だ片側に松葉杖を突く身では何も出来ないので大人しく荷運びを眺めた。

　事故から目覚めた後は目まぐるしく時間が過ぎたように思う。
　視聴者達への一方的な説明を終えた後、次は会社に説明を入れなければと気合を入れたところで、それは必要ないと兄に止められた。
　何故かと問えば兄は、お前が目覚めない間に件の優秀な弁護士の友人に頼んで退職の手続きを進めていると然も当たり前の様に告げられた。
　何を勝手な事をと怒るとそれを超える剣幕で兄はこちらをいなす。
｢何度も辞めたいって言ってたのに辞められなかったのは誰だ？俺や母さん達が辞めてもいいって言っても、でもでもなんて言って結局辞めようとしなかったのは誰だ？｣
｢それは、俺……だけど｣
｢お前病気だよ。確実に病んでた。あんな会社、お前みたいな平1人辞めたところで経営には響かないし人員が足らなくなるのは大方人事のせいだから、お前のせいなんかじゃない｣
──お前のせいなんかじゃない。
　胸にすとんと落ちてスッと広がる。許される様な気がした。
｢そっか……俺あの会社、辞めてもいいのかぁ｣
｢だからずっとそう言ってるだろ？｣
　そこからは気持ちも決まり話は早かった。
　俺からは一切連絡を入れなくてもいいように手配してくれたり、給料も退職金含めしっかり出るよう計らってもらった。
今住んでるマンションは会社伝で契約した安いマンションなので、会社を辞めるならそこも引っ越したいと話せば、こっちに居る良い不動産屋を知っているとまた助けられた。兄の人脈は一体どうなっているのか。

＊→←＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す