99話 ページ7
ぼんやりと夜を照らす提灯、情緒ある木造の家屋、石垣…私のいた近代的な煌びやかさをもつ現代世界とは全く異なり、幻想的だ。
夕餉を済まし、現在九里のほうへと向かっていた。何故か分からないが、お弓は先に行ってしまったようで…今トラ男と二人で歩いている。
「…ワノ国ってさ、私のいた国の昔の様子に似てるんだ」
「…」
「でももう…その面影もあまりないけれど…」
頭に浮かぶのは空を突き破るが如くそびえ立つ摩天楼、夜は星と月を打ち負かす煌々としたLEDの照明…良く言えば、人類の文明の進化。悪く言えば、環境破壊。今更ながら私はそんな世界で生きていたのだとしみじみと感じた。
「ホームシックか？」
首を横に振る。
「ホームシックになるほど、彼処のことを覚えてないよ」
「！？」
帰りたいと思えない本当の理由はそこにあった。知識としては覚えていても、思い出としては残っていない。ただ事実としてしか記憶にないから、一つ一つの思い出に感情が結びつかない。ただ漠然とあの世界は平和で、その頃の私は幸せだった…ということしか分からない。
「でも私、今不思議と懐かしさをおぼえてる。私はあの世界で育って、今はここで生きてるって実感できる…それが凄く嬉しいんだ」
「…そうか」
トラ男は少し目を細めて、わしゃわしゃと私の頭を撫でた。頑張って簪を使ってヘアアレンジなるものをしていたのに…崩れた気がする。
そんな感じで歩いていると…花の都の飲み屋街の方まで来た。侍や商人達のわいわいと賑わう声が聞こえて来る。この辺りまで出ると先ほどとは打って変わって人通りも多くなる。だからと言って安全ではない。飲み屋の客の中にはオロチの部下の役人やカイドウの部下も多くいるからだ。
「おぉ〜、Aちゃんじゃないかい」
声をかけられ、振り向くとそこには常連のお客さんの夫婦がいた。
「知り合いか？」
「お客さんだよ」
そう言うと、トラ男は警戒を少し解いた。
「それにしても…噂は本当だったんだなぁ」
「噂？」
夫婦はニコニコと私とトラ男の顔を交互に見た。
「巷で人気の陶器屋の看板娘のAちゃんの好い人は腕利きのお侍さんだって噂だよ」
「はい？」
いやいや…何故そうなる？？というか噂の出どころ何処だよ、それ…
〜〜
魔法の言葉「ケ・セラ・セラ」は座右の銘にも使われたりしてます。
でも楽観視し過ぎるのも要注意⚠️
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ゆう(プロフ) - とても、楽しく読ませていただいてます。また、続き読みたいです。 (2022年1月31日 15時) (
レス) @page19 id: fe95cae7da (このIDを非表示/違反報告)
あんころ(プロフ) - 星猫さん» ありがとうございます！ (2021年9月11日 19時) (レス) id: 8a86a2abc8 (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - もう一つのｐｃを操作してます。続編おめでとうございます。 (2021年9月11日 14時) (レス) id: 7d3fe1e696 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あんころ | 作成日時：2021年9月11日 14時
