日溜りの香り ページ8
お互い荒い呼吸を抑えきれず、熱を持った体も冷めやらぬまま、禰豆子を凝視する。
幸いにも禰豆子は2人が【どういう状況だったのか】まではよくわかっていないようで、キョトンとした眼差しでじーっと見つめていた。
トンっ!
「っ!..」
我に帰ったようにA姉さんは炭治郎の胸板を押し戻し下から這い出る。
いや...まぁ、禰豆子が側に来てしまった以上はそれはそうなる、だろうけど...
「ね、禰豆子..。いつからそこにいたの?姉さんと部屋に戻ろう」
上擦った声色で禰豆子の肩に手を回し、部屋の外へと誘導しようとする彼女の浴衣の裾を、待ってくれと言わんばかりに炭治郎はひしと掴み引き止める。
「ぁ...そんな、A姉さん」
ここまで昂ぶった状態でおあずけだなんて、あんまりだというように必死に懇願の眼差しを向けるも、もう今の彼女には届かなかった。
「禰豆子がいるから...こんなの、教育上良くないでしょう?後で水持ってくるから、待っててね」
そんなのいいっ...いいから
炭治郎の訴えなど関係なく、困ったように眉をハの字に下げそれだけ伝えた彼女は、炭治郎の手をそっと解き部屋を出ていってしまった。
去り際禰豆子は、罰が悪そうに炭治郎を見やった。
サッと障子が閉じられた瞬間、炭治郎は言葉にならない声を漏らしその場にうずくまる。
急に行為を止められたせいで、興奮冷めやらぬ身体の異変が辛かった。
禰豆子も禰豆子だ..。いや、別に彼女が悪いわけでもないんだが、間が悪いとしか言いようがない。
ーあと、ちょっとだったのにー
「.......A姉さんの、羽織」
悶々としていると、彼女が先程まで浴衣の上から肩にかけていた羽織が目についた。畳の上に広げられたままのそれに、炭治郎はごくりと喉を鳴らし手を近付けていく。
まだ温もりも残っている。無意識に羽織に鼻を近付ければ、A姉さんの匂いがふわりと漂ってきた。
途端、ドクリと身体の芯が脈打つ。
ぁ...駄目なやつだ、これは
昔、まだ雲取山に住んでいた時、A姉さんの羽織がとてもいい匂いがしてたからという理由で、こっそり嗅いでいた記憶を思い出した。
度々どこにやったのかなー?と探し回っている彼女に罪悪感を抱きつつ、幼いながらにいけない事だと思いつつも止められなかったのだ。
いつ、彼女が帰ってくるかわからないんだ。
何とかしてこの火照った体は鎮めなきゃいけないのに...
炭治郎は泣く泣く誘惑に抗うしかなかった。
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八千代(プロフ) - あーちゃんさん» コメントありがとうございます!頑張って更新しますので宜しくお願いします(*´-`) (2020年6月9日 13時) (レス) id: 5c1b6b975d (このIDを非表示/違反報告)
あーちゃん - すごい面白いです!これからも頑張ってください(*´∀`) (2020年6月8日 20時) (レス) id: 20ef85385a (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - 果鈴さん» ありがとうございます(*´-`)!かしこまりました。無一郎が夢主を好きな理由については少し語らせていただきますので、少々お待ち下さいね。 (2020年6月4日 7時) (レス) id: 769605b6ca (このIDを非表示/違反報告)
果鈴(プロフ) - 初コメ失礼します!すっごい面白かったです!1つ思ったんですが、無一郎君が夢主を好きなのって、日寄さんの過去と同じようにしてるからですか?(語彙力無くてすみません) (2020年6月4日 6時) (レス) id: 71e0ecb3e1 (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - みかやしさん» コメントありがとうございます!いやいやそんな大そうな文は書けてません(汗)でも、嬉しいですありがとうございます(*´-`) 頑張って更新しますね! (2020年5月24日 7時) (レス) id: 769605b6ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:八千代 | 作成日時:2020年5月12日 19時