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日寄の過去〜side story伍〜 ページ23

自分を差し置いて彼女と懇意にしている弟が許せなかったが、それでもまだ巌勝は自分を保っていられた。
それは、一族の跡取り息子が己である事に変わりは無かったからだ。


教養もなければ言葉も喋らず、着るものもみすぼらしい。そんな男の元に、いくらヒノカミ様のお告げといえど巫一族が大切な1人娘を嫁に出すとは到底考えられなかったし、どう足掻いても自分が優位な立場である事は確かだ。そう思っていた。



ーあの日までは...ー




「っ!..縁壱、居たのか」



庭で素振りをしていた時、何気なく振り向くと音もなく縁壱が木の幹の横に佇んでいた。



「兄上の夢はこの国で1番強い侍になる事ですか?」



巌勝は産まれて初めて弟の声を聞いたような気がした。こんなにも流暢に言葉を喋るとは思ってもみなかったのだ。日寄と共に居る時は知らないが、少なくとも...



「私も、兄上と同じような強い侍になりたいです」



そう蔓延の笑みで語る弟。少なくとも、こんなに感情豊かな子であったなんて気付かなかった。なんて純真無垢な笑顔を浮かべるのだ。こんなにも、優劣をつけられてまで...人間じゃないと思った。気味が悪かった。



それから、巌勝が剣技の稽古をしている時に、たまたま彼が木刀を握る機会があった。
そして....歴然とした差を見せつけられたのだ。これは、【天才と凡人】、努力等では到底埋め尽くせないであろう圧倒的なまでの優劣。



ー足元が崩れ、一気に地獄に突き落とされたような気分になったー






「縁壱殿の件は報告を受けました。巫一族としましては、やはり日寄の許嫁はヒノカミ様のお告げ通り、縁壱殿へ。これは...」


ー日寄本人も、同意しております故ー




信じたくなかった。
彼女も、縁壱を選んだと言うのか?一族のしきたりも神の思し召しも関係ないと言った日寄様が、と言う事は...

紛れもなく、彼女自身の意思で...




その夜、巌勝は色んな感情がぐちゃぐちゃになり過ぎて、床に入っても眠る事が出来なかった。

継国家が(くだん)の要望を受け入れれば、間違いなく縁壱が跡継ぎに変わる。
そうすれば、私はあの三畳間へ押し込まれ、10歳になったら家を出されてしまう。日寄様の寵愛(ちょうあい)を受けるのも、私ではなく...



恐ろしさに吐き気すら催してきた。そんな時



「兄上」



静かな声色で尋ねて来たのは、今最も会いたくなかった人物だった。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 竈門炭治郎 , 原作沿い   
作品ジャンル:アニメ
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八千代(プロフ) - あーちゃんさん» コメントありがとうございます!頑張って更新しますので宜しくお願いします(*´-`) (2020年6月9日 13時) (レス) id: 5c1b6b975d (このIDを非表示/違反報告)
あーちゃん - すごい面白いです!これからも頑張ってください(*´∀`) (2020年6月8日 20時) (レス) id: 20ef85385a (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - 果鈴さん» ありがとうございます(*´-`)!かしこまりました。無一郎が夢主を好きな理由については少し語らせていただきますので、少々お待ち下さいね。 (2020年6月4日 7時) (レス) id: 769605b6ca (このIDを非表示/違反報告)
果鈴(プロフ) - 初コメ失礼します!すっごい面白かったです!1つ思ったんですが、無一郎君が夢主を好きなのって、日寄さんの過去と同じようにしてるからですか?(語彙力無くてすみません) (2020年6月4日 6時) (レス) id: 71e0ecb3e1 (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - みかやしさん» コメントありがとうございます!いやいやそんな大そうな文は書けてません(汗)でも、嬉しいですありがとうございます(*´-`) 頑張って更新しますね! (2020年5月24日 7時) (レス) id: 769605b6ca (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:八千代 | 作成日時:2020年5月12日 19時

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