先祖の涙 ページ18
炭治郎が放った一撃は見事人形の頚に命中したが、刀はその衝撃で真っ二つに折れてしまった。
地面に勢いよく尻餅をついた炭治郎は、苦悶の表情を浮かべながらズキズキと痛む仙骨部を押さえる。
「ごめんっ...借りた刀、折れちゃった」
そんな事は気にしなくていいのだと小鉄は首を振って、Aと共に彼の元へ駆け寄る。
「大丈夫?..炭治郎」
「っあぁ...A姉さん。格好悪いところを見られてしまったな。」
恥ずかしそうに顔を背ける炭治郎が、よっこらせと大勢を整えようとしたその時、ピシリと亀裂の入る嫌な音が辺りに響いた。
そして、絡繰人形がガラガラと音を立て崩れ落ちていく。その肢体の中心から現れたのは
「これは...刀?」
三人が目の当たりにしたのは、かなり年季の入った一本の刀であった。
一瞬の間を置いて、小鉄が少なくとも三百年以上前のものであると見定めると、炭治郎と共に興奮しながらその場で小躍りする。
「こ、これ炭治郎さん貰っちゃっていいんじゃないでしょうか?!ももも貰ってください是非!」
「え、やややや駄目でしょ?!今までの蓄積された斬撃があって、俺の時偶々壊れただけだと思うし!」
そんな運が良いってだけで頂けないよと炭治郎は遠慮するが、質の良い刀と聞いて物欲しそうな様を隠し切れていないのは、やはり剣士の
「ちょっと抜いてみます?!」
「そうだね見たいよね!!」
小鉄が興味津々でそう提案すれば、待ってましたとばかりに賛同した。
緊張した面持ちで刀を手に持ち正座すると、炭治郎はAも近くへ呼ぼうと声をかけようとし異変に気付く。
「A姉さん?..っどうした!?」
炭治郎は刀を放り咄嗟に彼女の元へと走る。頭を両手で押さえ苦しそうに眉根を寄せているAの姿が目に入ったからだ。
「..っ..」
「大丈夫か?頭が痛いのか?っなんでいきなり...」
炭治郎が彼女の肩を抱えると、酷い耳鳴りと頭痛を苦し紛れに訴えた。
そして...
彼女の瞳からは、ぼろぼろと止めどなく涙が溢れては落ちていく。
「....縁壱...様....」
ーっー
炭治郎は微かに彼女の口から漏れ出た言葉を聞き逃さなかった。
その声色は歓喜と悲哀に満ちており、縋るような眼差しは、辿っていくと先程の古びた刀を求めているようだった。
「日寄さん...なのか?」
その問いかけを境に、彼女は炭治郎の腕の中で意識を失った。
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八千代(プロフ) - あーちゃんさん» コメントありがとうございます!頑張って更新しますので宜しくお願いします(*´-`) (2020年6月9日 13時) (レス) id: 5c1b6b975d (このIDを非表示/違反報告)
あーちゃん - すごい面白いです!これからも頑張ってください(*´∀`) (2020年6月8日 20時) (レス) id: 20ef85385a (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - 果鈴さん» ありがとうございます(*´-`)!かしこまりました。無一郎が夢主を好きな理由については少し語らせていただきますので、少々お待ち下さいね。 (2020年6月4日 7時) (レス) id: 769605b6ca (このIDを非表示/違反報告)
果鈴(プロフ) - 初コメ失礼します!すっごい面白かったです!1つ思ったんですが、無一郎君が夢主を好きなのって、日寄さんの過去と同じようにしてるからですか?(語彙力無くてすみません) (2020年6月4日 6時) (レス) id: 71e0ecb3e1 (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - みかやしさん» コメントありがとうございます!いやいやそんな大そうな文は書けてません(汗)でも、嬉しいですありがとうございます(*´-`) 頑張って更新しますね! (2020年5月24日 7時) (レス) id: 769605b6ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:八千代 | 作成日時:2020年5月12日 19時