鈴蘭への恋慕〜side story弐〜 ページ14
「炭治郎...」
わけがわからず泣き出しそうな心を必死に繋ぎ止めていた時、背後から父の優しい声色が聞こえてきた。
振り向けば、やはり優しい笑みを称えてこちらを見つめる父。しかしその表情にはどこか悲しい色が見えた。
何故父さんは、こんなに悲しい匂いを漂わせるのか。
その意味は自ずとわかってしまった。
この時、自分達竈門家の人間と、A姉さんは血が繋がっていない事を知ったのだ。
彼女は昔、赤子の時に父さんに拾われたのだと言う。
なんだ、そういう事だったのかと全て合点がいって、何だか晴れ晴れとした気分だった。
ー彼女の匂いが特別なのは、血が繋がってないからー
ーだからこんなにも心が震える事があるのかー
なんだ...俺は何もおかしくなんかなかった。
なのに何で父さんは謝るのだろうか?【いつか】なんて言葉を選ぶのだろうか。
それじゃまるで、まるで...
今は、何も気付くなと言ってるみたいじゃないか
だから、父や他の家族を悲しませたくない一心で、何よりA姉さんを困らせたくない一心で、炭治郎は己の心に無理やり蓋をしようと試みた。
既に気づき初めてしまった感情の
ー言い聞かせたんだ...俺はー
「炭治郎!今手空いてるかしら?通り雨が降ってきそうだから、急いで洗濯物を入れてくれる?」
「わかったよ!」
助かるわと礼を言われて、意気揚々と次々と洗濯物を取り込んでいく。その時、ふわりといつもの愛しい香りがしてトクンと胸が高鳴った。
ーA姉さんの羽織りだったー
手に取ると、洗濯したばかりな筈なのに、それは彼女の匂いを纏っていた。無意識に口元へとそれを手繰り寄せた時
「やだ降ってきちゃったわー!」
「....っ!」
咄嗟に右手に彼女の羽織を引っ掴み、左腕には籠を囲い込んで家の中へと戻った。
何をやってるんだ、俺は...
幸いにもバクバクと脈打つ心音は母にはバレなかったようで、籠を下ろす場所だけ指示するとパタパタと駆けていった。
右手には、なおも彼女の羽織りを握り締めていた。
これはいけない事だ
そう理性ではわかっていたけれど、炭治郎はその羽織を改めて己の鼻と口元へと近づけた。
なんていい匂いなのだろう...堪らない。
歯止めなんて効かず、恍惚としたような面持ちで、一心不乱にその香りを堪能した。
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八千代(プロフ) - あーちゃんさん» コメントありがとうございます!頑張って更新しますので宜しくお願いします(*´-`) (2020年6月9日 13時) (レス) id: 5c1b6b975d (このIDを非表示/違反報告)
あーちゃん - すごい面白いです!これからも頑張ってください(*´∀`) (2020年6月8日 20時) (レス) id: 20ef85385a (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - 果鈴さん» ありがとうございます(*´-`)!かしこまりました。無一郎が夢主を好きな理由については少し語らせていただきますので、少々お待ち下さいね。 (2020年6月4日 7時) (レス) id: 769605b6ca (このIDを非表示/違反報告)
果鈴(プロフ) - 初コメ失礼します!すっごい面白かったです!1つ思ったんですが、無一郎君が夢主を好きなのって、日寄さんの過去と同じようにしてるからですか?(語彙力無くてすみません) (2020年6月4日 6時) (レス) id: 71e0ecb3e1 (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - みかやしさん» コメントありがとうございます!いやいやそんな大そうな文は書けてません(汗)でも、嬉しいですありがとうございます(*´-`) 頑張って更新しますね! (2020年5月24日 7時) (レス) id: 769605b6ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:八千代 | 作成日時:2020年5月12日 19時