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「うちのエレベーター、冷房ついてなかったでしょ?」
「…あ、たしかに。」
エレベーターから降りると、1番奥の部屋へと向かうAちゃんについて歩く。
「ここ、私の家」
「これ、どうしたらいい?」
玄関の鍵を開けながら、俺が引いてきたスーツケースを一瞬見たAちゃん。
「中にいれてもらってもいい?」
「…あ、うん。」
ドアを開けて押さえてもらってる間に、玄関へと踏み入れてスーツケースを中に運び入れる。
ふわっと鼻を掠めるいい匂い。
Aちゃんの部屋の匂い。
「ありがとう!
今、コーヒー淹れるから上がって?」
「えっ!?いや、Aちゃん…!」
「あれ?また冷房切れてる…!!
もうなんでー?出る時ついてたのに……」
俺の言葉なんて聞こえてないのか、独り言を言いながら奥の部屋へと行ってしまったAちゃん。
上がって、って……
もちろん何もしないよ?
何もしないんだけど、まじでAちゃんの警戒心がなすぎて、心配を通り越して呆れる域まできてる。
「…玉森くん?どうしたの?」
「っ…あ、いや……」
「玉森くん家と違って狭くて驚いたでしょ?
ごめんね。散らかってるけど、入って!」
奥の部屋から手招きされて、俺は躊躇いながらも靴を脱いで恐る恐る奥の部屋へと歩みを進める。
リビングを見れば、可愛らしい家具で統一されたレイアウトに、ここも変わらず甘くていい匂いが鼻を掠める。
そして、ドアが開放された隣の部屋にはシングルベッド。
「ごめんね、暑いよね。
うちの冷房の調子が最近悪くて、つけてても途中で消えちゃうの。
涼しくなるまでもう少し待ってね?」
「っ…あ、うん。」
確かに暑い。
でもそれは冷房だけのせいじゃない。
「あ、座って?
今飲み物用意するから!」
「………」
「コーヒーじゃ暑いよね?
アイスティーと麦茶とカルピス、どれがいい?」
誘導されたソファーに遠慮がちに腰かける。
俺の座ったすぐ隣に置かれたブタのぬいぐるみと目が合って、何とも言えない気まずさがぬいぐるみとの間に流れる。
「…玉森くん?」
「…っ、え!?」
「飲み物、何がいい?」
「あ、あぁ…じゃあアイスティーで。」
すっげー緊張してる俺。
目のやり場に困って、ブタのぬいぐるみを抱え込んだ。
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珠美(プロフ) - りょうこさん» りょうこさん≫コメントありがとうございます!励みになります(^^)これからも頑張りますので、よろしくお願い致します! (2021年7月5日 13時) (レス) id: 6cd37f4262 (このIDを非表示/違反報告)
りょうこ(プロフ) - 更新ありがとうございます。いつも楽しみにしています! (2021年7月5日 12時) (レス) id: c2325c836d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:珠美 | 作成日時:2021年6月30日 23時