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「あぁ〜!今日も楽しかった!ありがとう!」
お店を出ると、春の冷たい空気に包まれて一瞬身震いした。
「こちらこそ。
休みの日なのに付き合ってくれてありがとね!」
「休みだろうと平日だろうと、太輔くんに誘われたら断るわけないでしょ?」
またそんなこと言って。
俺だってだいぶ免疫ついてきた。
これくらいじゃいちいち動揺しない。
「Aちゃん?車こっちだよ」
「うん。でも帰りは大丈夫!
うちまで電車で帰れるから!」
車を停めてる駐車場とは反対の方に歩き出したAちゃんは、いつになく遠慮がちに俺から少しずつ離れていく。
距離が開くから自然と大きくなる声。
「いいよ。送ってくよ!」
「ううん!
本当に、大丈夫だから!」
「……?」
「ありがとう!
おやすみなさい!」
…なんだろう。
この、胸がザワつく感じ。
優しく微笑みながら手を振って、俺からどんどん離れていくAちゃんが今後二度と俺の前に現れないような気がして。
このまま何もせず見送れば、もう一生会えなくなるような不安に襲われて胸が張り裂けそうになる。
「っ…、待って!!」
「……?」
「やっぱり送らせて」
呼び止めようと駆け寄って、咄嗟に掴んだ腕は細くて折れてしまいそうなほど頼りない。
俺の顔を見てなぜか泣きそうな顔をしてるAちゃん。
「連れ出したの俺だし、家まで送りたい」
「……」
「今日はちゃんと送るだけだから」
俺の言葉にクスッと笑う。
その表情がどうしてか切なく見えた。
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作者名:珠美 | 作成日時:2021年9月15日 12時