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「私、どうしたらいい…?」
洗い物をしてたAちゃんの手の動きが止まって、俯いたその後ろ姿は小刻みに震えてた。
ソファーから立ち上がった俺はそっと近付くと、その震える肩に優しく触れる。
「Aちゃんは、まだ好きなの?」
「……」
「好きならそれを伝えた方がいいと思う」
あぁーほらまたここでいい人ぶって。
自分の本音なんて伝えられずにいる。
「…太輔くん、やっぱり優しいね」
「……?」
「でもその優しさはダメだよ」
やっと顔を上げて、俺を見てくれたAちゃん。
やっぱり目が潤んでて一生懸命に堪えてるのが感じ取れた。
「今ここで欲しい言葉はそれじゃないから」
わかってる。
そんなことは言われなくても十分理解してる。
俺だって言いたいのはこの言葉じゃない。
「それじゃぁ、本当に伝えて戻っちゃうかもよ?」
ズルいよな。
それで俺の反応を試してる。
これが駆け引きだとわかってて、俺がどっぷりハマってるのは今に始まったことじゃない。
「俺は前にも伝えたよ。
Aちゃんが好きだって」
「……」
「だけどAちゃんが彼を好きなら、俺は止めないし何も言えない」
結婚をやめると言われたことに混乱してる時点で、Aちゃんの中で彼に対する気持ちは吹っ切れてなくて。
Aちゃんの心が、気持ちが、ちゃんと答えを出すまでは俺は見守るしかないと思った。
どこかすれ違った状態じゃ上手くいかないのは目に見えてて、無理に一緒に居たってお互いを偽ってるのは辛すぎるから。
「Aちゃん自身で考えないと」
こんな上から目線なこと言って、本当は怖い。
余裕ぶっこいたフリして、本当は全然違くて。
じゃあ戻る、なんて言い出すんじゃないかと不安で仕方ないのに。
Aちゃんがまた心から人を愛するために、俺は心を鬼にして嫌な役目になるって決めたんだ。
そしてまた恋した時の相手が俺であるように……
密かに祈って、信じてる。
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作者名:珠美 | 作成日時:2021年9月15日 12時