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買ってきてもらった薬を飲むと、台所で洗い物をするAちゃんの側に麦茶の入ってたグラスを遠慮がちに置いた。
「ありがとね、薬」
「横になってなくて大丈夫?」
「うん、もうだいぶ良くなった気がする」
俺の言葉に「良かった」って力なく微笑んだAちゃん。
さっきのことを明らかに引きずってる様子で、俺から触れていいのかもわからなくてそのまま離れてソファーに腰掛けた。
「太輔くん…、」
「ーー?」
俺に背を向けたまま、小さく呟くような声。
表情はもちろん見えない。
「急に結婚やめるって言われたの」
主語はない。
だけど茜から全て聞いてたから今ここで確認するまでもない。
「…そっか」
気の利いた返事が思いつかない俺。
まじで情けないなって心底思う。
向こうが結婚をやめることで諦めかけてたAちゃんの気持ちがまた戻ってしまうんじゃないか、なんて俺都合の不安で頭がいっぱいになってて。
「…私どうしたらいいかわからなくて……」
震えるAちゃんの声に、何て言葉をかけたらいいんだろう。
俺だけの一方的な気持ちを伝えたら、さらに混乱させちゃう気もして。
「それで、あの日太輔くんに会いに行ったの。
会ったところで何の解決にもならないのにね…なんでか会いたくなっちゃって…」
茜からそれも全部聞いたよ。
俺に会って、話して、気持ちを確かめたかったって。
それなのに俺のせいで最悪な結果を招いてしまって、本当に申し訳なかったと思ってる。
「ごめん。俺、あの日…「全部聞いたよ」
「え?」
「合鍵返してもらおうとしたんでしょ?」
「……うん。
けど、結局返してもらえなかったんだ」
「……」
「でも彼女とは本当に終わってて別れてるから」
こんな説得力のない言い訳、信じてくれるわけないのに。
「傷つけてごめんね。
本当に…ごめん。」
だけど証明できるものも何もなくて、ただひたすら俺は謝り続けるしかないと思った。
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作者名:珠美 | 作成日時:2021年9月15日 12時