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「ごめんね、二人を送ることになって…」
「どうして謝るの?私は楽しかったよ!」
二人をそれぞれのマンションの前で降ろして、やっとAちゃんと二人きりになれた。
助手席来る?なんて言うタイミングを完全に失って、未だに後部座席で座るAちゃんと少し距離感を感じつつ会話する。
「千賀くんと二階堂くんが舞祭組ってことは、太輔くんは?何ていうチームなの?」
「チーム?
あぁーいや、そういうんじゃないんだよね(笑)」
Aちゃんは本当に俺らのことを知らないみたいで、それはそれで少し寂しい気もするし、だけど詳しかったら逆にこれ以上の関係にはなれなかったと思うから。
結果としては良かったのかもしれない。
「お店予約しちゃったけど、食べたいものがあれば変更しようか?」
「ううん、全然!
太輔くんが普段何食べてるのか気になるからそこにしよう!」
「ん?俺そんな珍しいもの食べてないけど(笑)」
Aちゃんの天然発言には、いつもクスッと笑ってしまう。
「ねぇーなんで笑ってるの?」
「ん?何でもっ…、ないよ」
赤信号で止まったタイミングで振り返ったら、不思議そうな顔して俺の顔を覗き込んだAちゃんの顔が思ったよりも至近距離で、咄嗟に信号の方への顔を逸らした。
「Aちゃん」
「ん?」
「この間のことなんだけどさ…」
「この間?」
信号が青に変わると前の車に続いてゆっくりアクセルを踏み込む。
運転してることを理由に顔は前に向けたまま。
運転席と助手席の間から顔を覗かせてるAちゃんを斜め後ろに感じながら、ずっと触れずにいた話題を出してみた。
「その話、今する?」
「……」
「もしかして、ずっと考えてたの?」
「Aちゃんはどう思ってたのかなって」
さっきまで近くで聞こえてた声が遠くなってバックミラーを確認すると、後部座席の背もたれに寄りかかりながら窓の外を眺めるAちゃんが見えた。
「正直に言っていい?」
「うん?」
バックミラー越しに合った視線。
ニコリともしないAちゃんの表情に、いい答えじゃないことは何となく感じ取れた。
「あれは、ただしてみたかっただけ」
「……」
「だから何の感情もないの」
…わかってた。
彼女にとって、特別なんて言葉は通用しない。
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作者名:珠美 | 作成日時:2021年9月15日 12時