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東京に戻ってくるなり、千賀と別れてタクシーに乗り込んだ俺は家に寄ることもせず荷物を持ったままAちゃん家に向かった。
あの日一度だけ訪れた家の記憶を頼りに、さすがに道に迷いすぎたのか運転手さんに怪しまれながらやっとの思いで辿り着いた。
こんな時でも常識とかマナーとか考えちゃう俺は、出るわけもないとわかっていながらもう一度だけ電話をかけてみる。
……が、出ない。
マンションの外から部屋を見上げると部屋の明かりは点いてなくて、さすがにまだ21時だし寝てるとは考えにくい。
もしかして残業?
今日は金曜だから、まだ仕事してるとか?
「あぁーどうしよう…」
連絡取れないって辛いな。
マンションのエントランスのドアを開けて入ると、インターフォンを鳴らしてみる。
「……」
うん、だよね。
やっぱり返事はなくて途方に暮れる。
「…っ、本当どうしよ…」
迷いと不安と焦りと、数日前の自分の行動が許せなくてまたイライラして。
どうにか誤解を解きたくて、ただ会って謝りたいのに会えなくて。
どうしようもない感情が胸の中ではちきれそうになる。
》家の前で待ってるね。
きっとまた見てもらえないLINEを送って、自分の気持ちを一方的にぶつけて焦ってる。
一度マンションのエントランスから出て、人目のつかない近くの垣根に腰かけてボーッと帰りを待つ。
「っ…、ヘックション!!!」
…やばい。なんか寒気してきた。
体もダルくて重いし。
きっとツアーの疲れが抜けてないんだろうな。
「…ううー寒っ」
あぁーいつ帰ってくんだろ。
気持ちが落ち込む中、両腕を組んで体をすぼめた。
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作者名:珠美 | 作成日時:2021年9月15日 12時