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「出張?!今からっすか?」
営業室に響いた巧見の声にみんなが一瞬視線を向ける。
『いやー急で悪い!
大きな案件だから時間との勝負なんだ。
先方が東京に戻るのが3日後だからこちらから出向こうと思って』
「それは理解できますけど…なんで俺なんですか?そこの担当、Aじゃないんですか?俺はサブだし」
『それなんだけどさ、担当変わりたいってAさんが言い出して…』
「はあ?」
部長に対する言葉遣いとは思えない巧見の態度。
営業成績が良いからこそ許される。
「なぁ、なんで俺が担当変わるんだよ」
部長との話が終わると早々に私のデスクに来て、隣の人がいないことをいいことに勝手に椅子に腰掛けて詰め寄ってくる。
「ここ最近のお前おかしいよな?
次々担当切って、仕事辞める気でいんの?」
「だとしたら何?
今まで多忙だった分、少しくらい身辺整理したっていいでしょ」
「辞めるのは勝手だけど、だからって同期に迷惑かけんなよ」
全然辞める気はないけど。
ただ、巧見との担当を手放したいだけ。
なのに、そんな風に辞めることに対して軽くあしらわれると、思ってた以上に腹が立つ。
「先方にも失礼だろ。
今回の出張、お前も来いよ」
「えっ?!なんでよ!!」
「当たり前だろーが!
担当変わるなら先方に説明するのが礼儀だろ?」
悔しいけど、ムカつくけど、巧見が言ってることはごもっともで、私情を仕事に持ち込んだ私が子供すぎるのかもしれない。
「…わかったよ。一緒に行くから」
「よっしゃ!それじゃ俺は美味い飯でも調べよーっと!
あっ、新幹線とホテルの予約はAがやれよな?」
「…なんとしても日帰りにするから」
途中までまとめてた他社との企画書を一旦保留にして、すぐに営業先の担当者に連絡してアポイントを取り始めた。
日帰り、絶対に。
何がなんでもその日中に帰れる時間で打ち合わせしたい。
「小旅行みたいで泊まりがいいけどなぁー」なんて呑気なことを言いながら私から離れた巧見を睨みつける。
泊まる魂胆が見え見えだからこそ腹立つー…
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作者名:珠美 | 作成日時:2021年9月15日 12時