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「ねぇ、ご飯食べた?」
「いや、まだだけど」
「何か作ろうか?」
「サヤカが?」
「ちょっとー、何その顔!
今までだって何回も作ってあげたでしょ?」
「いや、そうじゃなくて。
うちに来んの?って意味」
「いいじゃん。今日これから何も予定ないんでしょ?」
「そういう問題じゃなくてさ…、」
「いいからいいから!固いこと言わないの!」
俺の背中を押すようにして無理矢理マンションのエントランスに向かう。
ここで怒鳴ってでも振り切ればいいのに、俺はどうしてこうも意志が弱いんだろうか。
「とりあえず鍵、渡してくんない?」
「後でね?帰る時に忘れずに返すから!」
そう言ったってどうせ忘れたふりするでしょ?
鍵を口実に何度も来るんでしょ?
頼むから鍵を……
って口にしようとしてエントランスに入った時、
「太ちゃん……」
「っ、茜?…と、Aちゃん……」
オートロックのドア前で立つ二人の姿に足が動かなくなった。
Aちゃんがどうして此処に…?
雷が落ちたような衝撃が全身を突き抜けて、何も言えずにその場で固まる俺。
「ねぇ、この人たち誰?太輔の知り合いなの?」
この状況が俺の中で理解しきれなくて、腕にしがみつくようにしてピッタリと引っ付くサヤカのことを振り払うことに意識がいかなかった。
「もしかして追っかけ?」
「いや、違くて、俺の幼馴染で…っ、て、あっ!!ちょ…っ、!!」
俺は最低だ。
後ろめたさがあったからこそAちゃんの顔を見られなかった。
目を合わせたらきっと幻滅してる顔で俺を見てると思ったから。
そんな俺にしびれを切らしたのか、その場から走り出したAちゃんがエントランスから外に飛び出した。
その姿にやっと目が覚めた俺。
「Aちゃん…っ!!」
追いかけようとしたらサヤカが俺の腕をグッと引っ張る。
「っ…、サヤカ…!!」
「鍵返さなくてもいいの?」
「は?なんでそうなるんだよ」
そんなやり取りを見て、茜も俺らの横を通り過ぎる。
「茜…っ、」
俺の言葉にキッと睨みつける茜。
こんな茜の表情は初めて見た。
「太ちゃんの事、見損なったよ」
「茜…!!」
言い捨てられた一言に全身の力が一気に抜けて、Aちゃんを追いかける茜の後ろ姿をただ見つめるしかなかった。
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作者名:珠美 | 作成日時:2021年9月15日 12時