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数分後。私たちは茶店の小さな椅子に5人で座っていた。
暖簾に吊るされている風鈴の音がなんとも涼しげだ。
女の人の名前は玲香さんと言うらしい。
玲香さんは、手に持ったお茶の揺れる水面を見つめながら、ゆっくりと、躊躇いながらも話し出す。
「私の祖母がね…昔、ここによく通っていたの。でもここ、階段しかないでしょ。」
私たちは、頷きながら静かに耳を傾ける。
「祖母が車椅子になってからは、いけなくなってね。代わりに私がここによく来るようになったの。」
話を聞き終えた私たちの中から、鋭い声が上がる。湊先輩だ。
先輩は自分のメガネをクイっと中指で持ち上げ、何かを探るように言葉を発する。
「玲香さん。さっき貴方は、「今日は」と言いましたね。ここには頻繁に来るんですか?」
そんな中私の隣に座っていた慎吾が、思い切り目を見開く。
気になって、小声で聞いてみると、
「先輩が敬語なんて使ってるの初めて見た。」
そうなの!?と全身でビクッと驚いてしまった私の方を、湊先輩は鋭い目つきで一瞥する。
事情を知らない玲香さんは、なんでそんなことを聞くんだろうと言うように話す。
「ええ、ほぼ毎日来てるけど…?」
畳み掛けるように今までおとなしかった楓が言葉をかぶせる。
「あ、あのっ!そこでなにか不思議なことが起きたりしませんでしたか!」
うーん、と唸ってから、何かを思い出したのか、少し早口で玲香さんが話す。
「これは私の聞き間違いかもしれないけど、時々鈴の音みたいなのが聞こえたり、ポン、ポンって鼓?鞠?をつくような音が聞こえるわね。」
彼女は一旦そこで言葉を切り、付け足す。
「貴方たちが言っているのって、噂のことでしょ?私が言っているのは昼だったから……」
そっかぁ……と少ししゅんとした楓に、玲香さんは微笑みかける。
「でも、私の祖母は確か夜中にも行ったことがあるはずよ。もしよければ、うちに来て話を聞いてみる?」
これは、重要な手がかりを掴むチャンスかも!
慎吾が口を開く前に、私はグイッと手を上げて、勢いよく話す。
「はい!ぜひお話、聞かせてください!!」
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北条ひかり(プロフ) - 水無月歌乃@絵師さん» 褒めていただき、うれしいです!これからもよろしくお願いします! (2022年8月10日 23時) (レス) id: 690716307d (このIDを非表示/違反報告)
水無月歌乃@絵師(プロフ) - 冒頭から世界観に引き込まれました。とても素敵なお話ですね! (2022年8月10日 23時) (レス) @page2 id: bff6de7ecd (このIDを非表示/違反報告)
北条ひかり(プロフ) - 朱まぐさん» ありがとうございます!こちらも、更新頑張ります! (2022年8月5日 18時) (レス) @page8 id: 98e6601380 (このIDを非表示/違反報告)
朱まぐ(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。主人公達のやり取りが面白くて読んでいて楽しかったです!最新話に出てきた狐の正体や少女が言っていた言葉の意味などもとても気になります。無理せず作者さまのペースで頑張ってください! (2022年8月5日 17時) (レス) @page3 id: 36aa4bf6d2 (このIDを非表示/違反報告)
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