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我慢していた涙が溢れ出す。
「あっ……」
玉森くんがそんな私に気付き、手を伸ばす。
だけど…私に触れようとした玉森くんの手は、スッと透けてしまった。
「…触れられないんだ。」
「…そうなの?」
「俺に会いに来て、いっつも泣いてる谷本に。俺はここにいるよって…何度も話しかけたし、触れようとした。」
…知らなかった。
「眠ってる俺の手に、谷本が手を置いた時…俺もその上から触れてたよ。……まぁ、こんな風に透けちゃうけどね?(笑)」
そう言いながら、病室にある花瓶やベッド、テレビに触れようとする玉森くん。
「玉森く…」
「ありがと。」
「え…?」
突然の言葉に驚いて玉森くんを見る。
「俺に気付いてくれて…ありがと。」
玉森くんの目には、涙が溜まっていた。
玉森くんも、辛かったんだね。
ずっと 気づいて欲しかったんだよね。
「玉森くん…一緒に学校行きたいよ…っ?いつ行けるの?いつ…目を覚ますの?」
「さぁね…俺も分かんないや(笑)」
それから、私たちは中学時代の色々な話をした。
2ヶ月以上 会話していなかった私たちは、話題が尽きなかった。
ガラガラッ
「菜々子ちゃん?!こんばんは。」
病室に入ってきた玉森くんのお母さん。
「あ、こんばんはっ!!」
玉森くんも 少し慌てて涙を拭ってる。
見えてないんだから、大丈夫だよ?(笑)
「遅くまでこめんね?もう辺りは暗いから、気をつけて帰ってね。」
「はい、失礼します。」
「谷本、送って行こうか?」
玉森くんが 私に聞く。
ううん、大丈夫。
首を振ってニッコリ笑いかけると、玉森くんも ふわっと笑って手を振ってくれた。
"またあした"
口パクでそう告げると、照れたのか向こうを向いた。
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このみ - 大人になった裕太 (2020年10月3日 19時) (レス) id: 25b3f023e7 (このIDを非表示/違反報告)
nanacoy1139(プロフ) - 黄色好きさん» 黄色好きさん、素敵なコメントありがとうございます…(^ ^)続編も考えておりますので、また良ければ是非お越し下さいね。 (2019年1月24日 7時) (レス) id: da866a5801 (このIDを非表示/違反報告)
黄色好き - 伝えたい想いは、何時でも伝えられるわけじゃないって事。それなら、今こそだからすぐにでも伝えたいなって。想いはありますよ。またいい話しでした。青春に戻ってみたい。 (2019年1月24日 1時) (レス) id: f0b607ac31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:nanaco | 作成日時:2019年1月22日 12時