【27】生まれたての心 ページ36
唐沢「ただいまー」
Aが扉を開け、俺たちを中へ入れた。
唐沢「今、お父さん呼んでくるから」
Aはそう言い残すと、俺たちを置いて家の奥へ入って行った。俺たちは緊張して立ち尽くしていた。
凪沢「キャプテン、緊張してる?」
浪川「お前もだろ」
凪沢「別に。でもキャプテンは緊張するよね、未来のお父さんなんだから」
表情の薄い顔でからかう凪沢は、あまり緊張していないようだった。
浪川「うっせ」
凪沢「部員皆いってるよ、Aとキャプテンはお似合いだって」
もちろんそんなことは知っていたが、改めて思うと少し恥ずかしかった。
浪川「黙ってろ」
しばらくすると、Aが戻ってきた。その腕には工具箱に似た箱が抱えられていた。
唐沢「待たせてごめん。私のお父さんだよ」
その男は白衣をまとい、色白で細かった。あまり似ていないなという印象を受けたが、よく見ると髪色や形のいい鼻はとても似ていた。
唐沢父「いらっしゃい。娘がお世話になってるな」
Aの父さんは見た目よりふけているようだった。50代半ばといったところか。
唐沢「さ、凪沢くん、もう一度腕を見せて」
ああ、と返事をしてから凪沢は制服を脱いだ。Aは凪沢の義手に、工具箱からだした棒状の道具をさしこんだ。
呆然とそれを眺めていると、義手がゴトリと落ちた。義手を持つAの手に、重さで力が入っていた。
凪沢「あ、あの………」
何がなんだかという俺たちは黙ってAを見つめていた。
Aは凪沢の義手を床に置くと、父さんから義手らしいものを受け取った。
唐沢「びっくりした?私のお父さん、医学者なの。医療ロボットとか、義手、ペースメーカーみたいに体に埋め込む機械とかの、開発をしてるの。私もたまに手伝うんだよ」
そしてAは手際よく凪沢に新しい義手をつけた。
凪沢「すっげー………全然違う………」
義手を動かしながら凪沢が感嘆の声をあげた。
唐沢父「もちろんさ。一番新しいモデルだからね」
凪沢が喜ぶ様子を見て、Aの父さんは満足したようだった。
凪沢「なら、これ、高いんじゃ…」
それなら心配ないよ、とAが笑う。
唐沢「それはサンプルとして作ったもののコピーだから。凪沢くんにあげる」
凪沢「ほ、ほんと?」
良かったね、と凪沢に笑いかけるAを見て
俺は密かに嫉妬した
今日の海の男!
浪川「おい、そこのお前!…俺の彼女になれ!!」
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涙音(プロフ) - *文月*〜huduki〜さん» 返信遅くなってごめんなさい。こんな風に誉めていただいたのははじめてです。書いていて良かったです........!実は近々この続編を上げることになりました。もしよろしかったら読んでみてください。本作よりさらに良いものになるよう精一杯執筆いたします。 (2016年12月11日 23時) (レス) id: 541fead6be (このIDを非表示/違反報告)
*文月*〜huduki〜(プロフ) - 私は5年くらいこのサイトで色々な小説を読んできましたが、その中でこの作品がダントツで面白いです。もっと熱く語りたいのですが、文字数の上限をこえそうなのでこれくらいにしておきます。気持ちが伝わると嬉しいです。これからも素敵な作品を作っていってください。 (2016年11月14日 10時) (レス) id: bb022945e6 (このIDを非表示/違反報告)
涙音(プロフ) - 律華@Twitterはじめました。さん» コメントいただいて久しぶりに戻って参りました…とりあえず少しだけ更新しましたが、夏休みに完結できたらと思います!すっかり放置してました… (2015年7月4日 21時) (レス) id: 71e3a373e6 (このIDを非表示/違反報告)
律華@Twitterはじめました。(プロフ) - 更新頑張ってください!続き見たいです! (2015年7月4日 5時) (レス) id: 7cb333b288 (このIDを非表示/違反報告)
海王星(プロフ) - 久しぶりの更新だね笑 相変わらずの素晴らしい文才!期待に胸が弾むぜ( ´∀`)← (2014年8月9日 17時) (レス) id: c49ea11c01 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:涙音 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/enkorimatsue/
作成日時:2014年1月14日 1時