【21】戦慄の数秒間 ページ29
湾田「……くっそ…」
湾田くんが舌打ちするのが聞こえた。
同時に、湾田くんの…あの人懐っこい笑顔が脳裏をよぎる。
足でも怪我してみんながサッカーできなくなったらどう責任とってくれるわけ?
というか、野次馬なんてしてる暇があったらみんなを助けなさいよ。
怒りの感情だけがめちゃくちゃに頭の中を駆け巡った。もう、何がなんだかわからない。
視界にもう一度湾田くんをとらえると、湾田くんは今まさに殴られようとしていた。
唐沢「………危ない!!」
私は二人の間に跳び出そうとした。私に気付いた金髪の不良が腕を下ろす。その隙に湾田くんを庇う形で手を広げた。
湾田「おい、よせ………逃げろ………」
唐沢「逃げないっ!これがあたしのせいなら尚更!これ以上みんなを傷つけさせない!!」
私は吠えるように叫んだ。怖くてたまらないけれど、歯を食いしばって不良を睨んだ。
その金髪の不良は色つきの眼鏡をしていた。そしてそれは湾田くんが殴ったのだろうか、割れていた。
恐怖からか、私は肩で息をしていた。今にも足がすくみそう。なんたって、何をされるかわからないのだ。
金髪の不良は目を細めた。私の顔をまじまじと見ている。
次の瞬間、私は殴られるのだろうか。それとも、このままどこかに連れていかれてしまうかもしれない。どうしよう…
色々なことを考えたけれど、それはほんの数秒のことだったと思う。金髪の不良がふっと息を漏らした時、我に帰った。
不良「………Aちゃん?」
それは不良とは思えないほど、優しい口調だった。心なしか、顔つきも柔らかくなった気がする。
不良「ねぇ、Aちゃんだよねぇ?ねぇ、そうでしょ!?」
不良は私の肩を揺さぶった。その手に付いていた血がベットリつく。思わず身震いした。
唐沢「そうだけど…」
不良「ほぉら、嘘じゃなかったぁ!!」
金髪の不良は急に笑顔になると、私に抱きついてきた。
唐沢「いやあああ!!何なのよこの金髪メガネ!離してよ!」
私は狂ったように叫んだ。何しろ驚いたものだから。
金髪メガネは私を離すと、後ろで殴りあいをしていた不良に声をかけた。
不良「星降ーっ!ほらAちゃんだよぉ!」
私はホシフルと呼ばれた不良の前につき出された。イチゴとミルクを混ぜたような長髪に、右耳にはカフス。ホシフルは、金髪メガネよりずっと長身だ。
今日の海の男!
浪川「おい、そこのお前!…俺の彼女になれ!!」
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涙音(プロフ) - *文月*〜huduki〜さん» 返信遅くなってごめんなさい。こんな風に誉めていただいたのははじめてです。書いていて良かったです........!実は近々この続編を上げることになりました。もしよろしかったら読んでみてください。本作よりさらに良いものになるよう精一杯執筆いたします。 (2016年12月11日 23時) (レス) id: 541fead6be (このIDを非表示/違反報告)
*文月*〜huduki〜(プロフ) - 私は5年くらいこのサイトで色々な小説を読んできましたが、その中でこの作品がダントツで面白いです。もっと熱く語りたいのですが、文字数の上限をこえそうなのでこれくらいにしておきます。気持ちが伝わると嬉しいです。これからも素敵な作品を作っていってください。 (2016年11月14日 10時) (レス) id: bb022945e6 (このIDを非表示/違反報告)
涙音(プロフ) - 律華@Twitterはじめました。さん» コメントいただいて久しぶりに戻って参りました…とりあえず少しだけ更新しましたが、夏休みに完結できたらと思います!すっかり放置してました… (2015年7月4日 21時) (レス) id: 71e3a373e6 (このIDを非表示/違反報告)
律華@Twitterはじめました。(プロフ) - 更新頑張ってください!続き見たいです! (2015年7月4日 5時) (レス) id: 7cb333b288 (このIDを非表示/違反報告)
海王星(プロフ) - 久しぶりの更新だね笑 相変わらずの素晴らしい文才!期待に胸が弾むぜ( ´∀`)← (2014年8月9日 17時) (レス) id: c49ea11c01 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:涙音 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/enkorimatsue/
作成日時:2014年1月14日 1時