岩本さんは、気づいてくれない。【黄】

2 ページ9

・


「同じとこ受験すんの？」


勇気を出して同じ大学行こうかなーって、お昼ご飯を食べながら言ってみたら、


「なら少なくともあと５年は一緒にいられるな」


なんて普通に言うけど、それが私にとってどれだけ嬉しい言葉か照は分かってる？


流石にもう気付いた。

私の照に対するこの感情が恋なんだって。


私が可愛いものを持っていても照だけは、「それ可愛いな」て言ってくれたり。

他の女子よりもほんの少し近い距離感に、毎回ずっとドキドキして、ほんの少し期待もした。


深澤先輩たちがいなくなって、空いてしまった照の隣はいつも私がいるようになった。



「A〜、昼飯行こ〜」

「悪ぃ。ここわかんないから教えて？」

「部活もうすぐ終わるから、先着替えて待ってて！」




まるで付き合ってると錯覚してしまいそう。






「なあ、今度の休みどっか行くの？」

「うーん、特に何も。多分勉強するか、走るか」

「ぶっ！ ほんとそれしかやらなさそうで怖いんだけど。じゃあさ遊びに行かね？ 夏休み入ったら本格的に受験シーズン入るじゃん。だからその前にパァっと」



それは2人で？と思って見上げると、教科書に視線を落としたままの照。

窓からそよぐ暖かい風に髪が靡く。



「い、行く！！」

「うわっ！？ びっくりした。なに、そんなに大きな声出さなくても聞こえるって(笑)」



くしゃくしゃってなる笑顔に、恥ずかしくなって俯けば「何処に行くか決めような」て。





この時だよ。私が照に初めてこの気持ちをぶつけようと思ったのは。







.




遊びに行く場所は直ぐに決まった。

定番といえば定番だけど、遊園地に行くことに。



いつもならシャツにジーパンとか着る私、というか女の子らしい服なんて持ってないからどうしよって。


少しくらい可愛い服着たっていいよね？


照と仲良くなって2年くらい。

初めて2人で遊びに行くし遊園地だなんて、まるでデートみたい。



少しでも可愛いと思われたい。

男みたいな見た目だってからかわれてきたけど、照にだけは可愛く見られたい。


だから、初めて友達に相談した。




「あのさ、今度遊びに行くんだけど。遊園地に着ていける女の子らしい服ってどんなのがいいのかな？」

「それってデート？」


友達のユキちゃんは、3年間ずっとクラスが一緒で仲良くしている子。

とても女子力が高いから相談するなら打って付けだと思った。



.

3→←決断

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す