岩本さんは、気づいてくれない。【黄】

変化 ページ15

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大学生活も慣れた２年目のこと、バイトと学業の両立が結構大変だったこの時は、いつもよりも自分に時間を使うことが出来なかった。


だからいつもなら邪魔になってきた頃、自分で切っていた前髪も伸ばし放題で、ノートを取っていると邪魔で耳に掛けた。



「……なんか、雰囲気変わったな」

「ん？」


なにがだろう？と首を傾げて照を見れば、黒板をジーッと眺めつつ頬杖ついてる。

あ、この顔は内容全然入ってないな。




「なんか、綺麗に見える」

「んっ？」



なにが？ 誰が？

え、もしかしてあの先生とか？

いや流石にないか。おじさんだし。



すると照がこっちを向いて私の伸びた髪に手を伸ばす。


ドキドキして、うっすら汗をかく。



「最近、お前のこと綺麗だとか言う奴いてさ。なに髪伸ばすことにしたの？」

「は、へ？ 私？」


さっきからの発言はどうやら私に向けられていたようで、まさかと思って思わず声が裏返ってしまった。


「ち、違うよ。切る暇なくて、」

「ふうん」



なにこれはどういう反応？

よ、喜んでいいことなの？







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「ねえねえ、浅間さんだよね？」

「えーっと、はい」




照の様子に変化が現れた頃、私の周りも少しだけ変化があった。

今までは遠巻きに見られていた感じのする女の子達が話し掛けてくれるようになった。




「ずっとね男子とばっか居るから、話し掛けてもいいものか考えてて。でも最近、こうして1人の時もあるでしょ？ だから話してみたくて」

「そう、なんだ。嬉しいな」



男の子と勘違いされながら話し掛けられた事はあって、だからこの彼女＿＿百合丘(ゆりおか)さんもそうだったら悪いなと思ったけど、どうやら違うみたい。



「最近、綺麗になったよね？ 髪が伸びて雰囲気が柔らかくなったというか。どうせなら、このままお洒落してみたら？」

「雰囲気キツかった？」

「うーん、キツいとかいうか。ずっと少年みたいって思ってた、かな。ごめんね」

「ううん、大丈夫。女性らしくてしても似合わないと思ってて」

「はあ！？ そんな事ないわよ！ 綺麗な顔立ちしてるし、肌も綺麗だし、スラッとしててモデルみたいだし！ もっともっと自分知らなきゃ損しちゃうよ！」


バンッと机を叩いて身を乗り出した百合丘さんに驚いて仰け反ってしまう。


こんなふうに言ってくれた人、今まで居なかったな……。




「ふふ、損しちゃうか」





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