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PET bottles ページ12

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「それで、なんて言われたの?」


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数学の課題を学校で残ってやっていたらもう日が落ちていて、
下校ついでに、なんとなく生徒指導室を覗いたら、なんと智と先生がまだ居た。

昼休みからなので、5時間目と6時間目、そして俺が数学の課題を終わらすまでの1時間ほど、ずっとソコで説教をされていたのだそうだ。

それを聞き続ける(ちゃんと聞いていたのかは不明)智もすごいけど、滾々と説き続ける先生もすごい。さすが体育会系というかんじ。

指導室から出てきたとき、智は俺を見て「あ」と口をあけ、先生は疲れの滲んだ顔で「寄り道せずに帰れよ」と言った。

長い間拘束されて説教されたはずの智は、今は通学路を歩きながら、平気な顔して手の中のペットボトルの水を揺らしてる。


「ねえ、なんて言われた?先生に」

「わすれた」

「忘れることないでしょうよ。さっきのことじゃん」

「んん、」

ペットボトルの中で揺れる水に夢中な智は、それを街灯の明かりに透かして遊ぶ。
泡が立たないようにユラユラと水を揺らすと、灯の波がペットボトルの中に漂って綺麗だった。


「はぁ…ホント話ができないんだから…」


あきれ返った俺の独白も、500ミリリットル以下の水のきらめきに敗北して届かなかった。

さまざまに角度を変えて光の反射具合を見ていた智は、ペットボトルを底から覗くといちばん綺麗に見えることを発見したようだった。

「うわ、」

右手で高々と持ち上げて、下から覗く智の瞳が、ペットボトルの水より何倍も煌めいている。

「すげえ…」

こうなったら最後 俺の存在すら忘れてるんだから…と、諦めと苛立ち半々に、ヤケになって空を見上げた。


ああ、星も出てるや……、なかなかキレイじゃない…




すると、視界にニュッと入って来た【きらめき】


「カズ、見て!」


その景色が、智から差し出されたモノだと気づくのに時間がかかった。

ペットボトルの底。ああ、いちばん凸凹してるから光が反射しやすいんだ…


「綺麗……」


思わず、そんな声が漏れた。


「な?」


視線を下げると、ふわりと得意げに笑う顔。



驚いた。


きれいなものを前にしたら、いつも周りが見えなくなるはずの智が

感動を、共有してくれた。


それがただの気まぐれなのか、それとも信頼の証なのか。



嬉しそうにペットボトルの底にくちづける智を前に

答えは出なかった。



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作者名:きんにく | 作成日時:2020年4月19日 0時

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