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sleeping boy ページ9

流星群の日のあとから、智は寝てばかりいるようになった。

授業中は、こくりこくりと首を揺らすか、調子のいいときは ぽかんと口を開けて上を向いて眠った。

調子の悪いときは、しんどそうに机にだらんとしなだれて眠った。


7月の初めの日に席替えがあって、智と席が隣になったので、ずいぶんよく見えるようになった。

今日は体調が悪そうだ…と思って隣を見たら、机に頭を預けて横を向き、眠そうな中で口角をあげてこちらを見上げていたこともあった。

気だるげなその表情に、危うい魅力のようなものを感じて、ぼうっと見つめていたら、先生に「前を向け」と怒られた。俺だけ。智は先生に、居ないも同然のものとして扱われている。


「…どこ行くの?」

昼休みになると、智はおもむろに立ち上がって、ふらりとどこかへ行こうとする。

呼んでも聞こえていないみたいで、眠そうに目をしばたかせながら、教室を出ていくのだ。

追いかけるのもなんだか癪なので、俺は俺で、昼ご飯をさっさと済ませて、ピアノを弾きに行くことにしている。コンクールが近い。



.




「二宮くん、ちょっと」

放課後に、担任の先生に呼ばれた。軽そうなノートの束を、持っている。

まさに今から、雑用を押し付けます。という顔をしていた。

このノートの束は今から僕の手から離れます。という顔だ。

雑用は、あまり好きじゃない。それに対する感謝の気持ちが軽いからだ。
俺はそんなに義理堅くも優しくもない。どちらかと言えばひねくれている。


「はい?」

「これ美術室まで持って行ってくれない?松本先生のクラスのやつが混ざっててさ」

「あ、ハイ」


松本先生は1年生のクラスを持っている。

たぶん職員室でチェックをしている間に、2年のうちのクラスと混ざってしまったのだろう。

職員室で、どんなふうに生徒のノートを管理しているのか知らないが、そういうミスなら職員室でまた渡せばいいじゃないか。わざわざ俺を介さなくても。


「松本先生、ちょっと変わってるから苦手なんだよね」

なるほど。


足も太ければメタボと呼べるのに…という中途半端な体型のオジサン。それが俺のクラスの担任だ。

冴えない外見なうえに、生徒に教師の悪口を言うなんて。この先生の株がガクンと下がる。


「分かりました、渡しておきます」


渋るのも面倒くさいので、俺は素直に雑用を引き受けることにした。




.

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きんにく(プロフ) - くろしばさん» 温かいコメントをありがとうございます、他の作品のことも見てくださっているのですね・・・こちらこそ感謝が足りません。日々精進していきます!ありがとうしか言葉がでなくてすみません(笑) (2020年6月1日 22時) (レス) id: ef9ab81a93 (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - ゆきのすけさん» 素敵なお言葉をいただけて嬉しいです!知識不足文章能力等、まだまだ課題はたくさんですが、そう言っていただけると救われます。一生懸命書きます!ありがとうございます。 (2020年6月1日 22時) (レス) id: ef9ab81a93 (このIDを非表示/違反報告)
くろしば(プロフ) - 唯一無二のストーリーはもちろん、その繊細な文章構成や選び抜かれた表現にはいつも驚きや優しさがあり、とても強く感情を揺さぶられます。この作品をはじめ、きんにくさんの作品に出会えたことに感謝するばかりです。微力ながら、これからも応援させていただきます。 (2020年6月1日 2時) (レス) id: a32bce887b (このIDを非表示/違反報告)
ゆきのすけ(プロフ) - 情景が、主人公の表情が、心情が、胸が痛むほど繊細に流れこんできました。考えること無く流れこんでくるそれはとても心地がいい筈なのに、その分強く心を揺さぶられました。この作品に出会えて良かった…有難う御座います。これからも、心より応援しております…! (2020年5月31日 20時) (レス) id: cfd9b5973a (このIDを非表示/違反報告)
ゆきのすけ(プロフ) - シリーズの一話を何の気なしに覗いてから、気付いたら狂ったようにこの作品だけを、求めて読んでいました。20年間生きてきて、占ツク以外でも沢山の本を読んで来ましたが、こんなにも引き込まれた物語は正直言って初めてです。 (2020年5月31日 20時) (レス) id: cfd9b5973a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きんにく | 作成日時:2020年5月17日 12時

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