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reaction ページ48

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『たぶん屋上に居ると思う』


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櫻井先生の言葉どおり、智は屋上に居た。


高いフェンスの頂上に見えた、背中。

夏を忘れられない風が、ぬるく、適度に吹いている。
智の居るところは、ちょっとだけ強く吹いてくるようで、ふわふわと、少し伸びた髪が後ろになびいている。


また、風と遊んでいるのだろうか。


えりあしが伸びている…と思って、何気なく目が行ったその首が、怖いほど細く見えた。


そしたら、肩も、腰も、おんなじようにそう見えて、吹き飛ばされて消えそうな その頼りなさに、俺は焦った。

儚いだとか、綺麗だとか…そういうことを言っている暇もなく、智がとにかく小さくて

風が強くならないうちに、降ろさないとって


焦って、だからゆっくり、近づいた。




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音を立てずにフェンスに近づき、智を見上げたら、目を瞑って顎をすこし上げ、風を受けている。

痩せたのだ…と、シャープになった頬を見て、やっと気づく。

ひとまわりくらい、痩せた。


頬は、両手で挟んだら むに、とチャーミングにはみ出していたのに、今ではそれができそうもない。

今年は海に行かなかったのか、その肌は冬とおんなじ白いまんまで、どうしてか、顔色が悪く、長いまつ毛の落とす影が、いつもよりずっと憂いを帯びて見える。


女のようにも、男のようにも見えない。


俺は、智がほんとうに風にさらわれそうで、怖くなった。


「……さとし」


たんぽぽの綿毛を崩さないようにする、その慎重さで、名前を読んだ。

そんなに大きな声ではない。

櫻井先生は、俺なら逃げないと思っているみたいだけど、俺は、ぜんぜんそうは思わなかった。

ふつうに呼んだら、たぶん一瞬で逃げてしまうだろうと思った。



智がゆっくりと目を開ける。そして、完璧に美しいまばたきを、3回。


だけど、ちらりと俺を見た途端に、フェンスを掴んでいる手が、ぐっと強張って、カシャン…とささやかな悲鳴を立てた。



5秒間くらい、見つめ合ったまま、どちらも動きを、息さえも止めていて



誰も、よーいどん、と言わなかったのに

智がすごいスピードでフェンスを飛び降りて、屋上の入口へ逃げ出したのと

俺が智を追うために駆け出したのは


ほとんど、同時だった。



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so Run→←no



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きんにく(プロフ) - くろしばさん» 温かいコメントをありがとうございます、他の作品のことも見てくださっているのですね・・・こちらこそ感謝が足りません。日々精進していきます!ありがとうしか言葉がでなくてすみません(笑) (2020年6月1日 22時) (レス) id: ef9ab81a93 (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - ゆきのすけさん» 素敵なお言葉をいただけて嬉しいです!知識不足文章能力等、まだまだ課題はたくさんですが、そう言っていただけると救われます。一生懸命書きます!ありがとうございます。 (2020年6月1日 22時) (レス) id: ef9ab81a93 (このIDを非表示/違反報告)
くろしば(プロフ) - 唯一無二のストーリーはもちろん、その繊細な文章構成や選び抜かれた表現にはいつも驚きや優しさがあり、とても強く感情を揺さぶられます。この作品をはじめ、きんにくさんの作品に出会えたことに感謝するばかりです。微力ながら、これからも応援させていただきます。 (2020年6月1日 2時) (レス) id: a32bce887b (このIDを非表示/違反報告)
ゆきのすけ(プロフ) - 情景が、主人公の表情が、心情が、胸が痛むほど繊細に流れこんできました。考えること無く流れこんでくるそれはとても心地がいい筈なのに、その分強く心を揺さぶられました。この作品に出会えて良かった…有難う御座います。これからも、心より応援しております…! (2020年5月31日 20時) (レス) id: cfd9b5973a (このIDを非表示/違反報告)
ゆきのすけ(プロフ) - シリーズの一話を何の気なしに覗いてから、気付いたら狂ったようにこの作品だけを、求めて読んでいました。20年間生きてきて、占ツク以外でも沢山の本を読んで来ましたが、こんなにも引き込まれた物語は正直言って初めてです。 (2020年5月31日 20時) (レス) id: cfd9b5973a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きんにく | 作成日時:2020年5月17日 12時

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