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grey(side O) ページ2

いつもいつも、気付いたら壊れている。

『大ちゃッ…、ごめ…』

その日も、いつどうやって、そんな顔にさせてしまったのか分からなかった。

でも、保健室の先生が、枯れたたんぽぽを復活させたみたいに、おれにも出来るかもしれないと思って、ぜんぶの意識を、相葉ちゃんにつかった。


でも結局、もう手遅れだった。
やっぱりこの世の終わりみたいな顔で、相葉ちゃんは帰っていった。

先生が、あまりにも上手に 何かを大切にしてみせるので、自分にも出来るような気がしたけど、錯覚だったみたいだ。



行ってしまう相葉ちゃんを見ていたら、その横で、ふわりと栗色の髪が舞った。

あ、と思ったら、その子はくるりと振り向いてくれて、一瞬、目が合う。

『ちゃこちゃんの髪の毛、きれい』

ちゃこちゃんは、「半永久的に」眠るのだと、相葉ちゃんから聞いていたので、違うと思うんだけど
その栗色の髪は、絶対に彼女のものだった。

なんで居るんだろう、起きたのかな、「半永久的」って、永遠と同じくらい長いと思っていたのに、違ったんだろうか……って

ぐるりと頭が、考えるために回り出したけど


もうなんだか、その日はちょっと疲れてしまっていた。


だから、近くにあった砂を手に乗せて、サラサラと指の間から流した。

【そうされるのも、好き】

細くて小さくて、甘やかなその声を最後に、あたりがシン…と静かになった。

星が降るのが終わってからも、しばらくコソコソとしていたけど、もうみんなの方も疲れてしまったのかもしれない。


『…もしもさ、それを、死ぬほど苦しいと思うときが来たらさ、』

『苦しいのを一人で、おしまいに、しないで』


そのときは、カズの声だけが、しんしんと聞こえてた。

マッチを売る少女とか、誰かのためのバラードとか、想いを乗せた花束とか

そういう類の、切実な声だった。


なので聞き逃さないように、耳を澄ましていたけど

ものすごく身体が重くて、眠かった。


まどろみの中で聞いた声は、夢なんじゃないかと思うほど優しくて

そのあとは、もうあまり、思い出せない。



.




気付いたら家に着いていて、迎えてくれた母ちゃんが

首のあたりを見て、顔を真っ青にしたことだけ、ちょっと覚えてる。


ひとりでベッドに入ったら、あまりにも周りが静かで、怖くなった。

目を閉じたら怖い夢を見そうなので、眠らずに、朝を待つことにする。




.

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きんにく(プロフ) - くろしばさん» 温かいコメントをありがとうございます、他の作品のことも見てくださっているのですね・・・こちらこそ感謝が足りません。日々精進していきます!ありがとうしか言葉がでなくてすみません(笑) (2020年6月1日 22時) (レス) id: ef9ab81a93 (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - ゆきのすけさん» 素敵なお言葉をいただけて嬉しいです!知識不足文章能力等、まだまだ課題はたくさんですが、そう言っていただけると救われます。一生懸命書きます!ありがとうございます。 (2020年6月1日 22時) (レス) id: ef9ab81a93 (このIDを非表示/違反報告)
くろしば(プロフ) - 唯一無二のストーリーはもちろん、その繊細な文章構成や選び抜かれた表現にはいつも驚きや優しさがあり、とても強く感情を揺さぶられます。この作品をはじめ、きんにくさんの作品に出会えたことに感謝するばかりです。微力ながら、これからも応援させていただきます。 (2020年6月1日 2時) (レス) id: a32bce887b (このIDを非表示/違反報告)
ゆきのすけ(プロフ) - 情景が、主人公の表情が、心情が、胸が痛むほど繊細に流れこんできました。考えること無く流れこんでくるそれはとても心地がいい筈なのに、その分強く心を揺さぶられました。この作品に出会えて良かった…有難う御座います。これからも、心より応援しております…! (2020年5月31日 20時) (レス) id: cfd9b5973a (このIDを非表示/違反報告)
ゆきのすけ(プロフ) - シリーズの一話を何の気なしに覗いてから、気付いたら狂ったようにこの作品だけを、求めて読んでいました。20年間生きてきて、占ツク以外でも沢山の本を読んで来ましたが、こんなにも引き込まれた物語は正直言って初めてです。 (2020年5月31日 20時) (レス) id: cfd9b5973a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きんにく | 作成日時:2020年5月17日 12時

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