ｰ９(TH)ｰ ページ9
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陳列棚の前で「どれにしよう…」と悩む彼女は、やはりこうしてラフな姿で見ると幼く見える。
先程ちょうどコンビニで用事を済ませた後だったが、エレベーターでばったり会ったAさんが明らかに顔色を悪くして立っていたので、途中で倒れたりしないか心配で着いて来てしまった。
頭ひとつ分小さいAさんが不思議そうにこちらを見上げて歩くので咄嗟にコーラを口実にしたが、冷蔵庫にまだ残っていることは内緒。
忘れないうちにコーラを取りに行っていると、Aさんが満足そうに苺のマカロンを手にして俺の所に向かってきた。
「それにしたの？」
こくりと頷いて嬉しそうににこにこ笑うAさん。
ああ、可愛いな、これは。
なんだろう、飼い主に懐く子犬を見ている気分。
頭を撫でたい衝動に駆られたけどぐっと堪えて、会計を済ませてコンビニを出た。
＊＊＊
帰り道、マンションの入口まで歩いてきたところで、Aさんがしゃがみこんでしまう。
「ごめんなさい……ちょっと、目眩が、して…」
謝りながら慌てて立ち上がろうとするAさんを止めて、彼女の目の前に屈んだ。
「危ないから、乗って」
でも申し訳ないです、と躊躇う彼女の顔色は真っ青だ。
具合の悪さによる不安感からか、大きな瞳には涙が溜まっている。
「申し訳なくないから。おいで」
もう一度言えば、背中に小さな身体の体重がかけられた。
なんとなく予想はしていたけど軽い。
Aさんの部屋に着き、お邪魔します、と小声で言いながら中に入る。
ベッドにそっと降ろすと、力なく横たわってしまった。
「…大丈夫？何か少し飲もうか」
手首にかけていたコンビニの袋を見て、どうして俺はコーラを買ったんだろうかとちょっと後悔。
彼女のマカロンはテーブルに置いておき、冷蔵庫にお茶があるとのことだったのでコップに注いでベッドに戻った。
Aさんの上体を起こし、片手で支えながらもう片方でコップを口元に運ぶ。
静かに彼女の喉が鳴って水分補給が出来たことを確認すると、頭に手を添えてゆっくり寝かせた。
ひとまずこれで大丈夫だろうか。
睡眠をとれば、少しは良くなると思うけど…。
薄らと目を開けているAさんに、鍵はポストに入れておくね、と伝えるとゆっくり頷いた。
「……テヒョンさん、ありがとう…」
小さく呟いた彼女の傍に屈む。
頭を優しく撫でれば、すぐに規則正しい寝息が聞こえてきた。
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作者名：naguno | 作成日時：2020年10月4日 12時
