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シャワー浴びるから先に寝てて、と言われ、私はベッドにひとり横になる。
シングルベッドには大きな抱き枕が転がっていて、もしかしてこれを抱きしめて寝てるのかな、と想像しながらぎゅっと抱きしめてみた。
「……テヒョンさんの匂いだ」
石鹸のように爽やかで、だけど少し甘い彼の匂い。
安心する匂い。
まだあまり現実味がないけど、テヒョンさんと両思いになれたんだなぁ、私。
嬉しい気持ちが込み上げてきて、だけど同時に咳まで込み上げてきて。
口元を覆いながら咳込んでいると、ギシ、とベッドが軋んだ。
テヒョンさんだ。
「…大丈夫？あったかくして寝ないとね」
テヒョンさんは私が抱き枕を抱きしめているのを見ると、「これは要らない」と言って床に投げてしまう。
思わず口から「あ…」と声が出た私をじっと見つめてくるから、「テヒョンさんの匂い、安心するから…」と呟けば、私の隣に横になった彼に抱きしめられた。
「本物ここに居るでしょ」
テヒョンさんの胸に顔を埋める体勢になり、身体が密着する。
びっくりして思わず身体を引こうとしたけど腰に回された腕が力強くて離れられない。
「あ、Aさん今逃げようとした？」
「して、ない…です」
普段は心地いいと思う彼の低い声は、今はただただ心臓に悪い。
どうしよう、心の準備が全くできていないのにこの距離は心臓が破裂してしまう。
「…緊張してる？」
身体が強ばってるから、と小さく呟いたテヒョンさんの手が、優しく頭を撫でてくれる。
テヒョンさんの手、好きだな。
大きい手のひらでゆっくり撫でてくれるのが、落ち着く。
緊張を解すために、頭を撫でてくれているのだろうか。
「…テヒョンさん、好き」
そういう優しいところが好き。
あとはエレベーターの扉を開けて待っていてくれるところとか
コーヒーのミルクをこっそり追加でくれるところとか
夜道は危ないからってさりげなく送ってくれるところとか
置き手紙だけ急に敬語になっちゃうところとか。
私の名前を呼ぶ低い声も、大きな手のひらも、たまに見せてくれる無邪気な笑顔も、全部、好き。
彼の胸に顔を埋めたまま独り言のように呟いたその言葉。
しっかり彼の耳に届いていたようで、私の頭を撫でていた手のひらが頬に添えられる。
優しい口づけが落とされて、耳元で囁かれた言葉に、眠気などどこかへ行ってしまった。
「俺も好きだよ」
〈end〉
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作者名：naguno | 作成日時：2020年10月4日 12時
