ｰ１４(TH)ｰ ページ14
.
眠ってしまったAさんの頭を撫でながら、寝顔を見つめる。
急に俺を見て「綺麗」だなんて言うから何事かと思ったけど、眠たそうにしていたし頭がぼんやりしていたのかな、と思う。
いや、違ったとしても、そういうことにしておく。
指に触れる栗色の髪の毛は、癖毛なのか少しふわふわしていて触り心地が良い。
ナチュラルメイクで厚塗りされていない肌は綺麗で、自然にカールされた長いまつ毛が頬に影を落としていた。
小さめの鼻はそこまで高くないけど筋が通っていて、柔らかそうな唇はほんのり色づいて艶がある。
「……Aさんの方が綺麗だけどね」
いつからか女性に対して苦手意識を持っていたけど、彼女は不思議と平気だった。
彼女の
分からないけど、彼女の居る空間は居心地がいい。
＊＊＊
「Aさん、起きて」
20分後、深い眠りに入ってしまう前にAさんを起こす。
もし仕事を続けるなら仮眠は短い方がいいし、寝るならここよりも布団で寝た方が疲れもとれる。
目を覚ましたAさんは慌てた様子で「わ、私、寝てましたか…？」と顔を赤くして言うから、彼女がカフェで寝ていたあの日のことを思い出した。
「寝てたけど、少しだけだよ。どう？ちょっとすっきりした？」
はい、と頷いた彼女はソファーから降りるとすぐに作業を再開した。
その後40分程仕事を進めたAさんは、0時を回った時計を見ると片付け始める。
「遅くまでありがとうございました。テヒョンさんのおかげで大分進みました」
満足気なAさんはにこにこしている。
今日はそろそろ帰りますね、とパンプスを履いた彼女が部屋を出る前に俺の顔を見上げた。
「今度、何かお礼させてください」
そして俺の手を取った彼女が、小さなメモ紙を渡してきた。
そこには綺麗な字で書かれた、彼女の連絡先。
「都合のいいとき、連絡ください………あ、あのっ、でも、迷惑だったら、それ捨ててください！」
コーラご馳走様でした、お邪魔しました、おやすみなさい！と早口で言った彼女は深々と頭を下げると部屋を出て行ってしまった。
ひとりぽつんと残された俺は、手元のメモ紙に視線を落とす。
「…捨てるわけないじゃん」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 814人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：naguno | 作成日時：2020年10月4日 12時
