おとなりさん〈TH〉 (ページ12)

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「テヒョンくん、なんか急に元気になったね」

Aさんが注文したオムライスにケチャップで "おつかれさま" と書いていたとき、後ろからスタッフに声をかけられて「うわぁ」と間抜けな声が出る。

「お、つ、か、れ、さ、ま……なんだ、仕事帰りの友達でも来てるの？」
「ま、まあ…そんな感じです」

セットのスープと一緒にAさんのテーブルに運ぶと、彼女はオムライスを見て「わあ…！」と声をあげた。

「テヒョンさんが書いてくれたんですか？嬉しいです…！」

写真撮ってもいいですか？と頬を赤らめて喜ぶ彼女を見て、自然と表情が緩んだ。

バックヤードに戻れば、先程のスタッフに「ふぅん…友達、ねぇ…」とボソッと言われて緩んでいた表情はすぐに引き攣った。

＊＊＊

時刻は21時、今日はもう上がる時間だ。

ずっと集中してパソコンと睨めっこしている彼女の元に行き、そっと声をかける。

「Aさん、何時まで居る？」
「…あ、もう21時…どうしようかな……」
「俺、もう上がるんだけど、タイミング悪くなければ一緒に帰らない？」

すぐにこくりと頷いた彼女に「着替えてくるね」と伝え、着替えて戻れば会計を済ませた彼女がドアの前で待っていた。

「仕事、結構忙しいの？」
「今の時期はかなり…。あとは休んだ分の仕事が溜まっているので、今日と明日で挽回します」

両手で小さくガッツポーズをする彼女が可愛らしい。
頑張れ！と俺も一緒にガッツポーズをすると、ありがとうございますと笑った彼女は大きな欠伸をした。

「でも今日はもう眠そうだね」
「……眠くなってきました。家に帰ってから続きしたいけど…寝ちゃいそう…」

片道10分の道のりはあっという間で、すぐにマンションに着いてしまった。

もう少し一緒に居たいな、なんて思ってしまって、歩くペースが遅くなるけど部屋のドアはもう目の前。

それじゃあ、と言ってドアを開けたAさんを思わず呼び止める。

「もし良かったら、俺の部屋来ない？」

きょとんとアーモンド型の瞳を見開いて、動きが停止するAさん。
当たり前だ。自分で言っといて何だが、唐突すぎる。

「俺の部屋で仕事するのはどうかなって思って。寝そうだったら俺が起こすし」

俺の提案に、彼女は「なるほど…！」と頷く。

「じゃあ、お言葉に甘えて…」

部屋に招くのは急すぎたかとも思ったけど、まだ一緒に居られると思うと素直に嬉しかった。

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