おやすみ ページ23
「それで、どうしたの？」
『暇だったから、お前の声が聞きたかった』
ストレートすぎる返答に戸惑った。
私の心臓を串刺しにして身動きを取れなくするような言葉を、どうしてこうも簡単に吐けるのだろう。
「…あっそ」
『緑谷からお前の連絡先もらってもいいか？』
「うん、いいよ」
『そうか、よかった。これからも電話する』
普通のふりして会話するのが精一杯だった。
ただでさえ恋人と別れたり轟に求婚したりされたりして頭の中がグチャグチャなのだ。
何かの間違いだ、お互い変な勘違いをしているだけだと自分に言い聞かせて、やっと平常心を保っているのに。
電波の向こうまで聞こえてしまうんじゃないかと思うくらいに、私の鼓動は高鳴っている。
これからも電話するなんて言われて、私の心は身体を置き去りにしてふわふわと踊り出している。
それを押さえつけるように息を吸って、どうにか笑い声のようなものを零した。
「ハハ、轟って天然だよね」
『そりゃ生き物なんだから当たり前じゃねえのか？』
「…そういう意味じゃない」
なんで私、こんなに元気がないんだろう。
「他の女の子にも、今日みたいに急に電話したりするの？」
私は轟の何でもないくせに、なんでこんなこと訊いてるんだろう。
『いや？今まで女と電話したことはねえが…あ、姉さんとか母さんとはあるな』
ほら、それを聞いて安心してる自分がいる。
私は、私は、
「あー…ごめん、もう眠いから寝るわ」
『ああ、夜遅くに悪かったな。おやすみ』
「…うん」
口に出す勇気なんてない。
おやすみだなんてたった4文字の言葉でさえも、なんだか生々しく感じてしまって言えなかった。
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なぎさ(プロフ) - てのーるさん» 初めまして、コメントありがとうございます！そう言っていただけて本当に嬉しいです！本作をお読みくださりありがとうございました！ (2018年10月21日 11時) (
レス) id: 2a6bd4d84b (このIDを非表示/違反報告)
てのーる - 全体がとても良くまとまったストーリー構成で、見ていて気持ちのいい物語でした！ これからもご自愛の上、執筆活動を頑張ってください^^ (2018年10月21日 2時) (レス) id: e945a347a3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なぎさ | 作成日時：2018年8月17日 0時
