last wall 26 -side You- ページ4
久しぶりに見た元カレは
前よりハイブランドの服を着て身なりも綺麗になってた。
そっか、私の情報を色々流してお金もらったもんね。
さすがにうしろめたそうだったから
《久しぶり》
こっちから英語で話しかけた。
《うん》
彼も答える。
彼とこうして再会して動揺してないと言ったら嘘になる。
でも思ったより何も思わないのは
私の中で彼より大きい存在の人が居るから。
「知り合い？」
マキちゃんから言われて
「うん」
そう、知り合いだ。
何でもないただの知り合いだ。
頷いた。
改めて思った。
不思議と恨み言すら浮かばなかった。
酷いことされたのに。
でもそのお陰で日本に来てにぃと再会して
ニカと出会って
裕太くんやみやっちと友達になってマキちゃんとも出会えたから。
それはこの人とあのまま過ごしてたら出来なかった。
お金に目が眩むような人と過ごせなくて良かった、とすら思う。
たど
《元気そうだね》
そう言われた事には腹が立った。
元気だけど元気じゃない。
ニカともにぃとも会えてないんだもん。
そして元気そうだと彼に言われる筋合いは無い。
でも今はマキちゃんと遊んでて楽しいから
《お陰様で》
さすがに嫌味が伝わったのか彼の顔が引き攣る。
でもそれにめげずに
《君に日本に来たらココがいいって言われたから来てみたんだ》
彼が言って
《お兄さんと大仏の前ではしゃいで写真を撮った、とか、ここが俺たちがハマった漫画の聖地って教えてもらってたから》
少しいい思い出風に言う彼にさすがに嫌な気持ちになる。
まるで私を意識してて来たみたいな言い方。
さすがに動揺したけど
《そう》
笑って答えて振り返って
マキちゃんに「行こうっ」って声を掛けてその場を離れた。
「いいの？」
「うん」
じゃあ、も、またね、も言わなかった。
だって私と彼の人生は二度と交わらないから。
その後すぐマキちゃんに電話がかかってきて急に仕事になっちゃったから
最寄り駅で別れて1人になった時。
ホテルじゃない方向に自然と足が向く。
呆れてるかな。
怒ってるかな。
もう私の事、嫌いになっちゃったかな。
カギはいつも持ち歩いていた。
だからエントランスは難無く通って
家の前に着くと少し決心が鈍る。
この時間だと寝てるかも。
チェーンもしてるかも。
でも、会いたくて。
意を決してインターホンを押すと少しして開くドア。
その先には驚いた顔のニカが居た。
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作者名：shizu
| 作成日時：2023年9月20日 23時
