last wall 36 -side You- ページ14
「ただい……どしたの?これ」
不動産の資料を広げて見比べてると仕事から帰ってきた高嗣が
机一面に広がったその量に驚いてる。
「そろそろ本格的に家を探さないと」
「あぁ、そうだよね。探してもらわないと」
って言ってから高嗣は「あ!」って慌てて私を見て
「出てけって意味じゃないよ!?お互い仕事が忙しいとき不便だし、立場的にどうしても家に居られたら困る時があるから言っただけで!!」
焦って弁明してるけど。
さすがに分かる。
高嗣は悪気が一切ないし
万が一は絶対に準備しておかないと。
高嗣もだけど私が1人になりたい時もあるだろうし
「わかってるよ。大丈夫」
「ほんと!?ほんとに分かってる!?誤解してない!?」
「してないって」
必死過ぎてさすがに分かるよ。
高嗣は私がそばに居てほしいって思ってることくらい。
「良かったぁ」
後ろから抱きつく高嗣は私の頬に顔を寄せて
「ただいま」
改めて『ただいま』を言うとギュッ、って抱きしめてくれる。
「おかえり。ご飯は?」
「食べた。Aは?」
「色々ちょこちょこつまんでたらお腹空かなくて」
「あはは、そーゆー時あるよね」
耳元でそのまま話すからくすぐったいけど
高嗣の少しハスキーなその声が好きだからそのままでいた。
「ホントは夕飯は1人が嫌なんだね。Aは」
夕飯に高嗣が居ないって分かってたから
ちょこちょこつまんで夕飯を食べなくした私をお見通しな高嗣は言うけど
「さすがに吹っ切れてきたよ。いつまでもメソメソしてても仕方ないし」
一応、言い返す。
高嗣には本音がバレバレでも。
優しい高嗣は
「ふーん」
とだけ言って、本音は気づいてるけど言わないね、って雰囲気で
頭を撫でてくる。
「だから、私の方がおねーさんです。子供扱いしないで」
「もうこのくだり何回目?おねーさん。撫でられるの好きでしょ?」
高嗣はクスクス笑いながら私の頭を撫でるから
正直、悪い気はしない。
むしろ気持ちいい。
懐くように高嗣にもたれたら
「ホント、2人とも根本は寂しがり屋さんだもんね」
って高嗣が言う。
『2人』ってにぃも含めて?って聞かなくても分かるけど
にぃが寂しいがってるの?
なんで?
でも私には出てけって言ったんだから私が居なくて寂しい訳じゃないよね。
「気になる?」
高嗣が聞くけど
「別に」
高嗣にも自分にも知らんぷりして高嗣の胸に顔をうずめる。
そんな私を高嗣はギュッと抱き締めた。
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作者名:shizu | 作成日時:2023年9月20日 23時